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これではクロロキンやイソジンを求めたくなる?

WHOのテドロス事務局長(Jose Cruz/Agencia Brasil)

WHOのテドロス事務局長(Jose Cruz/Agencia Brasil)

「これがコロナウイルス対策の世界のトップが言う言葉なのか」。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が3日に発言した言葉に愕然とした。
「現状で特効薬は見つかっていないし、永久に見つからないかもしれない」。現在、世界中の人たちが、「第3段階まで行った」というワクチンが実用化されることを前向きに期待しているところに冷水を差すような言葉だ。
 同事務局長は、隔離生活を送って来た世界中の人たちの気持ちをどう思っているのだろうか。「戦いはまだ長くなる」などと言っているが、人々が経済活動も満足にできないまま、運動や娯楽も満足に楽しめないような生活を、この先も病を怖がりながらずっと続けていけるとでも思っているのだろうか。
 人々にそういう生活をさせないようにすべく解決に務めるのが、WHOのような機関がやるべきことではないのか。あまりに他人事のような物言いに腹さえ立った。
 もっとも、「それではいけない」と思っているのは世界中の医師の方だろう。テドロス氏は3月頃にも「ワクチンができるのには最低でも1年半かかる」と言っていたが、半年も経たない時点で、治験第3段階まで行っているワクチン候補は少なくとも5つあり、その他、現時点で150を超える候補が控えている。
 「治療薬は見つからないかもしれない」と悲観的なことを言う人と、「なんとかして治療薬を作りたい」と精を出す人と、どちらに人々は期待をかけたいか。それは改めて言うまでもないだろう。
 また、テドロス氏と言えば、米国のトランプ大統領をはじめ極右の国家首脳と折り合いが悪いことで知られている。コラム子自身は、極右支持者が言うところの「WHOは中国寄り」「コロナは中国が仕掛けた」などの陰謀論には全く興味がない。マスクを着用しないことを、反抗ポーズのように振る舞う人たちに関しても、「感染しても構わないけど、他の人に迷惑かけるなよ」くらいにしか思っていない。 ただ、そんなコラム子でさえもテドロス氏の態度は、そうした人たちの反抗心に火に油を注いでいるようにしか見えない。 
 第一、これらの人たちの大半が「科学よりも宗教」を求める人たちだ。そんな人たちに対して「治療薬は見つからない」などと言ってしまったら、余計に神頼みになるだろう。最悪の場合、「どうせ人類は滅びるのだから」とばかりに好き勝手な生き方をするようになり、露悪的に感染リスクを上げるような言動を煽動する可能性さえ生みかねない。
 また、「正式なワクチンがない」ということにでもなれば、人々が科学的な確証も取れない、信用できない薬を求めて殺到するような事態も、現在以上に起きかねない。
 それはブラジルではボウソナロ大統領が推奨するクロロキンであり、はたまた大阪では吉村知事が勧めて話題になったうがい薬のイソジンだろう。これらも、多くの人が一笑に付す一方で、血眼になって薬局に駆け込んで在庫切れが起こるような事態となっている。そういう混乱を起こさせないようにするのが本来のテドロス氏の役目だと思うのだが。(陽)

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