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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月3日付け

 キリンが約2千億円もの投資をしてスキンカリオルを子会社化するとの発表には驚いた。当地のグループ企業・東山農産加工が築いてきた84年もの歴史が買収劇の背景にはある▼戦前に同支配人を務めた君塚慎氏が戦後初の駐伯大使として赴任、東山の後任だった山本喜誉司氏が戦後の勝ち負け抗争で荒れたコロニアの統合を図って文協を設立したのは、みなが知るところだ▼後藤留吉著『続・雑草の如く生きて』(96年)によれば、東山農場は三菱の岩崎家がポケットマネーで27年頃に購入した。質の悪いピンガで体を壊す移民が多かったことから34年に日本酒「東麒麟」の醸造を始めた。当初はアルコールを混ぜた合成酒だったため二日酔いが酷く「頭キリン」などと揶揄されつつも大いに愛飲された▼今回に先立つ大型対伯投資の代表例としては、07年に発表された新日鉄の既存製鉄所拡張と新炉建設の計1兆円を筆頭に、同年に住友金属工業が仏バローレックと当地で合弁会社設立に約2千億円、03年に三井物産がヴァーレ社に1千億円を投資したあたりが目立つ。これらが日本の生命線ともいえる資源系なのに対し、今回は食品という新分野への大投資であることが特徴だ▼商工会議所によれば日伯間の貿易高は07年の89億ドル、09年の96億ドル、10年の141億ドルと急増している。ただし、中国は昨年564億ドルで堂々の1位だった▼でもこれからが勝負だ。一世紀の歴史を持つ日本移民への信頼が他国企業との差を生むに違いない。日本酒で移民の心を癒したように、W杯や五輪の応援で乾いたブラジル人の喉を潤して欲しい。(深)

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