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イグアス移住地50周年=パラグアイの若い息吹=最終回=藤倉電線が社員50人募集=「第2期開拓」に向けて

ニッケイ新聞 2011年9月14日付け

 入植時に家長だった「第1世代」の多くは鬼籍に入り、当時二十歳前後の青年だった「第2世代」が60〜70代の重鎮となって第一線を退き、当時幼少の子供もしくは当地生まれの「第3世代」である40〜50代が現在の日本人会や農協役員の中心となった。
 その一人、3歳で移住した日本人会の福井一朗会長(47、岩手)に治安について尋ねると、「アルトパラナ県22市の中で、イグアス市は20年間最も治安が良いといわれ続けている」とし、その背景には日会の努力があると強調した。
 日本人会が中心になって警察協力委員会を組織して治安分担金を集め、警察車両のガソリン代、警官の居住費、給与補填、まかない婦の給与などを負担している。今年5月、同移住地の警察署に国から初めて配車されるまで、ずっとパトカーも寄贈し続けてきた。
 今移住地は分岐点に来ていると福井会長は考えている。「これ以上、土地は広げられない。あとは技術で生産性を上げるか、生産物に付加価値をつける工夫をして、みんなが生活できる事業を育てていくことが次の目標です。仕事がないと若者がデカセギに行ってしまう」と表情を引き締めた。
 日本人会は環境保護も指針にし、三井物産環境基金より助成を受けて実施するイグアス・ダム周辺の1440ヘクタールに植林する計画を進め、ヘクタール当り1200本、毎年15万本を植えている。
 また地方の移住地には珍しく日本進出企業も幾つか誘致されている。例えば三重県のキノコ栽培会社MIESAの工場だ。藤倉電線も近隣のエステ市に事業所を作る計画があり、移住地から50人の社員を雇い、近々メキシコで研修を受けさせる。
 移住地にはイグアス・ダムによる豊富な水に加え、近い将来発電設備も設置される。日本人会が整備する日本文化環境インフラに加え、子弟の高い日本語能力、良好な治安、水・発電条件は稀であり、日本企業誘致にはもってこいの場所だ。
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 パ国日本人会連合会の小田俊春会長は式典挨拶の中で、「少子化、若年層の日本就労による日系社会の急速な高齢化、地域住民間の経済格差からくる、さまざまな摩擦とアツレキなど、決してバラ色だけの未来ではありません」と現状の問題点をあげた。
 小田会長は身体を張って原始林に斧をふるう「第1期開拓」は終わったとし、「パラグアイが我々、日系に期待することは何なのか? 私たち日系でしか出来ないことはなんなのか」と「第2期開拓」のあり方を問いかけた。「地域社会全体の繁栄と安定を求めて、はじめて一個人の繁栄が可能になるという現実に目覚める」。
 移住地約8万7千ヘクタールのうち日系が約5万を所有し、地域人口の10%に満たない日系が経済活動の9割をにぎるという現実は、地域人口の90%を占めるパラグアイ人から見たときに、どう見えるのか。地域経済が好調であるがゆえに起きる地域住民の「嫉妬」が、犯罪増加の芽となる可能性もはらむ。
 小田会長は地域社会との共生の問題を静かに問いかけ、日系人に対する嫉妬が「反発」に発展して地域社会の不安定要因にならないよう、地域社会とのしこりを作らないための「第2期開拓」が必要だと説いた。日系コミュニティとしての団結を保ったまま、地域社会から孤立せずに統合する。それはブラジルにおいても重要な配慮だろう。
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 鹿児島県人会の慶祝団の一行、夫の幹雄さんと共に参加した四條(よじょう)喜久恵さん(きくえ、81、東京)は、1939年に第2アリアンサに入植した経験を持つ。「イグアスの50周年にはまだ若い。アリアンサも最初は日本人が自治をしていた。道路直しや墓掘りすらも私達に当番が回ってきた。イグアスも今はまだ一世がしっかりしており、日本語だけの生活ができる。でも本当に日本文化、日本語が残るかどうかは、これからの20年、30年が勝負だと思います。ぜひがんばってほしい」と世代交代が進むこの先50年後に想いを馳せ、エールを送った。(おわり、深沢正雪記者)

写真=パ国日本人会連合会の小田俊春会長(上)/日本人会の福井一朗会長/移住地内にあるイグアス・ダムには近々発電設備も取り付けられる予定


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