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なごやかに全伯短歌大会=総合1位は金谷治美さん=「おめでとう」言葉ひとつと掌の温み 残しゆきたり母の日の息子は=和気藹々と終日楽しむ

ニッケイ新聞 2011年9月14日付け

 椰子樹社(上妻博彦代表)とニッケイ新聞社が共催した第63回全伯短歌大会が11日、文協ビル内のエスペランサ婦人会サロンで開催された。160首もの応募作の中から堂々の大会総合第1位に輝いたのは、金谷治美さん作の〈「おめでとう」言葉ひとつと掌の温み残しゆきたり母の日の息子は〉だった。昨年の52人よりも多い59人が出席した。初参加者が3人、90歳以上が7人という壮健ぶりをみせつつ、和気藹々となごやかに短歌三昧の一日を楽しんだ。

 ニッケイ新聞が出した席題は「フェイラ」。東日本大震災の傷跡も生々しい祖国への想いと9・11NYテロ10周年当日というタイミングを考慮し、「日常生活の中の平和な瞬間を、この席題を通して詠んで欲しい」との説明が行なわれた。
 席題1位は、杉田征子さん作「珍しき果物のかずかず見せたくて訪伯の叔父とフェイラをめぐる」が選ばれた。震災に苦しむ日本から来た叔父への気遣いがほのかに感じられる作品といえる。
 独楽吟では「最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」(斉藤茂吉)の「川」を自らの故郷のそれに置き換え、最後を「るかも」で締め括る約束事が交わされ、全員がその場で頭をひねった。
 1位には野村康さん作「リベイラの夕風の中カノアにてギターつまびき渡りけるかも」が選ばれた。野村さんは「ただ見たままを詠っただけ」と謙遜するが、鋭い観察眼ととっさに思い浮かぶ機転の良さに賞賛の声があがった。
 まず女性が書いた上の句に、後から男性が下の句を付け足して完成させる「アベック歌合せ」では、「春うらら君と出掛ける公園に、今を盛りと咲く黄イッペー」(真藤浩子さん、藤田朝日子さん)が優勝した。
 最後に受賞者あいさつとして金谷さんは、「みなさんの短歌に対する想いが伝わってきて感激した一日だった」とのべ、閉会の言葉はバウルーから馳せ参じた84歳の酒井祥造さんが、「もう歳なので来年は来ないと思っていたが、今回来て皆さんの顔を見て、来年もやっぱりお会いしたいと思いました」と笑顔で語った。
 1947年から椰子樹会員となり、同誌の編纂も長年手がけた安良田済さん(96、山口)は、「全盛期の70年代には参加者130人という時もあって、文協大サロンが一杯になった。椰子樹は本当にいい人ばかり。今も昔も変わらない」としみじみのべた。

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