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鹿大学生が充実した研修=南米の進取の気風学ぶ=「学生連れてきて良かった」

ニッケイ新聞 2011年9月15日付け

 「南米における進取の気風を学ぶ」ために鹿児島大学から派遣された大学生12人と引率の原口泉教授、加藤泰久教授が8月17日に来伯し、充実した研修を終えて帰国した。今回初めてとなる南米への同研修派遣事業は、昨年10月に原口、加藤両氏が来伯し、県人会員や鹿大OBと交流、サンカルロス大学との学術協定提携が持ち上がったことから実現した。学生らは県人会で移民の歴史について講習を受け、ソロカバ市では現地大学生との交流やホームステイを体験し、パ国のイグアス移住地で行われた入植50周年記念式典には吉田浩己(67、福岡)学長も出席した。

 昨年初来伯してブラジルの同大学OB会発足式に出席し、南米との交流を深めている吉田学長は、イグアス移住地で8月21日晩、ニッケイの取材に答え、「OB70人の存在は非常に心強い。南米に根を下ろしているみなさんの進取の気風を学生に自分の目で見てもらい、動機を高め、視野を広げて欲しい」とのべた。
 この南米視察の予備知識をえるために15回の授業を事前にしており、大学から旅費の支援もするという力の入れようだ。「明治維新で薩摩藩が日本の近代化に貢献した先駆者としての精神を養ってもらうために、若者に国際的な視野を教育したい」との強い思いあってのことだ。
 「学生達はブラジルでホームステイしたり、歓迎してもらったり、一世のみなさんの話を聞いて、みな感激している。ブラジルにも、パラグアイにも学生を連れてきてよかったと実感している」。
 昨年から開始され120人が世界に旅立ったこのプログラムだが、今年は早くも半年で昨年を上回る参加希望者がおり、学生達の積極性が高まっている。「学生は米国、中国、アジアとあちこちに飛びますが、我々としては目玉はブラジル、パラグアイだと思っている」。
 原口泉鹿大名誉教授は、ソロカバ、イビウナなどで鹿児島県出身者などに集まってもらい、「薩摩とブラジルの近代化」について講演した。ドン・ペドロ2世が作ったサンパウロ州イパネマスに建造した反射炉、薩摩藩の島津斉彬も殖産興業に力をいれて溶鉱炉・反射炉を作るなど二人の共通点を指摘し、両国の近代化に果たした役割を論じ、「二つが連携して世界遺産に登録する運動をする意義がある」などと語った。
 一方、8月17日にリベルダーデ区のレストランで行われた懇親会では、園田昭憲鹿児島県人会長を始め同会員や、鹿大OB会メンバーなど約30人が参加し、世代を超えた交流が行われた。
 「ソロカバ市でのホームステイが楽しみ」と胸を弾ませたのは上田な桜さん(18、宮崎)。留学生の友人が多く、「スペイン語はコロンビア人の友人に教えてもらいました」と語り、現地学生との交流に意気込む。
 岡田帆奈さん(21、岡山)は、「大学生の間に色々な世界を知りたい」と研修に応募。建築学科に在籍しており、「古い建築物と新しいビルが共存しているサンパウロ市のみが素敵」とブラジルの第一印象を話す。
 「アジア以外の国は初めて」と宮本圭慈さん(19、長崎)。文化人類学専攻で、「教科書で知るだけでなく異文化を体験したい」と応募。「一番遠い国に来たのに日本らしさを味わえる。こんな国は他にないです」と驚きを隠せない。
 生野智巳さん(18、大分)は、「戦時の私財没収などこれまでの大変な苦労に驚きました」と同県人会で行われた講演の感想を語った。
 加藤教授は、「学生の安全を預かっている上で、県人会など多くの団体の助けは本当に頼もしい。継続していきたい」と展望を語り、サンパウロ市在住で鹿児島出身の小森広さんは、「人の交流は行えば行うだけ結果が出る」とエールを送った。

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