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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月7日付け

 中華民国(台湾)の建国百周年を記念して、同コムニダーデが文協の国際民族舞踊祭に参加したが、事前にさる筋から「あれは国として認められていないから出場させるべきではない」との圧力が実行委員会にかけられたとの話を、内幕に詳しい人から聞いた。それを頑として跳ね除け、中華民国として出場させた実行委員会の英断たるや立派なものだ▼90年代にユーゴスラビアが分裂した時代、民族舞踊祭の案内来社時に同コムニダーデ代表は、「私達が渡伯した時はまだ祖国は一つだったから、私たちだけは別々にならず、あくまで『ユーゴスラビア』として出場したい」と語っていたのを聞いて、涙が出そうになった▼40回の伝統を持つ同舞踏祭は、すでにサンパウロ市の伝統行事だ。創立以来の文協の理想である、各民族が持つ文化価値を高める行事だ。「ブラジルではアラブ子孫もユダヤ子孫も仲良く暮らす」ことはこの国に住む者の誇りだ。これはアジアについてもいえる▼小泉首相の靖国神社参拝に対する批判から中国で反日旋風が吹き荒れた05年6月、ある日系人がリベルダーデ広場で静かな抗議活動をすることを呼びかけたが結局は取りやめになった。「ブラジルで民族紛争の元を作ってはいけない」と判断されたからだ▼今回の台湾系への圧力も同様に、あってはならないことだ。この国ではあらゆる文化や民族が混ざる過程にある。国外においては国際関係といわれるものが、ブラジル国内ではエスニック関係として反映する。世界の縮図がここにある。でも民族紛争だけは例外だ。ここでは吐いて捨てるほど強盗事件は起きているが、民族テロだけはない。(深)

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