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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月22日付け

 「滞在先の国を知るためには市場に行け」という言葉がある。その国の人がどんなものを食べ、幾らで売られているのかというあたりが文化、経済を知るに手っ取り早いということなのだろう。これがサンパウロのフェイラになると、日本人にとっては立派な観光地になり得る▼野菜や果物、魚介類の充実から、よほど想像力の乏しい人でなければ、日本移民の歴史に思いを馳せることは容易だし、片言ながらもコミュニケーションも楽しめるだろう。デカセギ帰りの売り手も多く、日本の話に花が咲くこともある。先日旅行で来伯した知人夫妻を連れて行き、まさに—という体験をした▼まずはパステルを食べた。お釣りと一緒に「ハイ、プレゼンチ」とコシンニャの詰め合わせをお土産にくれた。続いて、大根を1本買うとネギをつけてくれる。当方の怪訝な顔を察してか「オマケね」ときた。魚を1匹買ったら「半身は刺身で残りは煮なさい」と食べ方まで指南され、鱗を丁寧に取るよう指示も飛ばしていた▼普段こんなことはない。「今日はついてるなあ」と思う以前に、このサービスの理由は一緒にいる旅行者然とした知人夫婦にあることに気がついた。もちろん両人は大感激である。こちらはその好意の背景を様々に解釈したりしているわけだが▼家人がブログにフェイラの写真を掲載したところ、日本在住の女性から「懐かしい」と連絡があった。幼い頃、近くに住んでおり「パステルが朝の私の楽しみ、父親は夕餉に刺身で1杯がお決まりだった」とか。コラム子が生まれる前の、拙宅と同じような風景を想像し、何となく嬉しくなった。(剛)

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