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査証発給業務=民間委託ついにスタート=〃改善〃策で見切り発車=在聖総領事館も窓口維持

ニッケイ新聞 2012年3月24日付け

 2月22日に開始予定だった株式会社JBACへの査証発給業務委託が遅れに遅れる中、いよいよ4月9日に始まる見通しになったことから、在聖総領事館は22日午後に、邦字紙、および日系旅行代理店それぞれを対象に説明会を開いた。主な〃改善〃点は、JBACが運営する「在サンパウロ日本国総領事館査証申請センター」(以下センター)に加え、総領事館も従来通りの方法で窓口業務を続けるとしたことだ。当日出席した旅行代理店関係者は「ほっとした」と話し、「私らの意見を聞いて改善し、きちんと納得のいくように説明してくれた。大部一秋総領事も『混乱をお詫びします』と謝罪してくれた」と満足した様子で語った。

 同センターはサービス料139・9レを徴収し、発給日数は総領事館で申請する際の半分である1・5日となる。月〜金曜日まで申請を受付け、土曜日も午前だけ返却業務を行なう。今後は郵送による受け取り、インターネットによる申請も実現する見込みだ。
 サービス料が高いとの不満も多かったが、小林雅彦首席領事は「インフラ整備やサービス向上にコストがかかるため、それほど法外な値段ではない」との見解を示し、鈴木暁領事は「安い方がいい方は当館を利用し、ファーストクラスのサービスを希望する方は、査証申請センターを利用してもらえれば」と使い分けを勧めた。
 本来は、発給に関する窓口業務を全面的に同センターに委託し、総領事館は「審査」に集中することによって、結果的に発給日数が短縮化できるはずだった。今回の〃改善〃策では、総領事館が窓口業務を維持するので、審査に人員を割くことは難しいようだ。
 「それでも日数短縮は可能なのか」との質問に対し、3領事は少しうろたえた様子を見せ、「今の人員でできるかは甚だ疑問。客がどちらの窓口をどれだけ利用するかにもより、やってみないとわからない。しかし最大限努力する」と、案に沿った取り組みを維持する姿勢を見せた。
 1年間を試行期間と位置づけ、1年後に案の見直しを行なうことが決定した。
 業者の間で広まった「公募の前からJBAC社に決まっていたのでは」との疑惑に関し、野村和久領事は「随意契約もできたが、良い企画を募り透明性を確保するため、敢えて企画競争にした。JBACに決めたければ、元々企画競争はしていない」と強調した。
 JBACが総領事館同様に対応できるのかという懸念には「委託先が決定した12月末から、総領事館職員が研修を実施している」と説明。
 同社は「質の高いサービス」「利便性の高いシステム」「充分なセキュリティ確保」の3点を要件として挙げており、その実現のため海外16カ国で査証代行業務を行なう大手旅行代理店HIS社に協力を申し入れ、出資及び人材の派遣を受けたと明らかにした。またHIS社が業務ノウハウを提供する可能性もありうるという。
 個人情報の管理に関しては「パスポート・書類の保管・輸送に関しては、重要機密事項であるため公にできないが、通常であれば紛失等が発生しない状況となっている」と説明し、万一の場合は「総領事館とともに迅速にブラジル外務省へ紛失事由の説明・査証審査を行う。その際にかかる諸費用はセンターが負担する」と述べた。
 総領事館は抜き打ちで監査を行ない厳正な管理に務めるが、万一の場合の賠償責任はJBACが負うとした。説明会の間、領事らは何度か「やってみないとわからないが、いつまでも引き伸ばすわけにはいかない」と繰り返した。

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