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リオ五輪向け指導者育成へ=〃ブラジルバレーの父〃今井さん=31日に若手集め講習会=「世界一を続けるため」

ニッケイ新聞 2012年8月30日付け

 先のロンドン五輪で男子が銀メダル、女子が金を獲得したばかりのバレーボールブラジル代表だが、地元開催となる次回五輪で男女とも金メダルを目指している。そのため、さっそく選抜若手指導者への講習会が企画され、その指導者に今井庸浩さん(68、東京)が選ばれた。1973年にブラジルに渡り、当時世界有数のバレー強豪国であった日本の技術を持ち込み、現在のバレー王国に育て上げた指導者の一人であり、言わば〃ブラジルバレーの父〃ともいえそうな人物だ。第1回となる講習会は31日に実施され、今井さんも「自分の経験の集大成を若者らに伝えたい」と意気込んでいる。

 ブラジルバレーの黄金期とも言えるアテネ五輪(04年)で男子代表に金メダルをもたらした立役者、当時天才セッターと呼ばれたリカルジーニョ選手は、今井さんの教え子だという。変幻自在の速攻を得意とするブラジル男子の司令塔として君臨し、04年のワールドリーグではベストセッター賞を受賞している。現女子代表のゼ・ロベルト監督も選手時代に指導したことがあるという。
 今井さんは、今回のロンドン五輪で男女共に好成績を残したバレーブラジル代表を、「運に助けられた部分は大きい」と分析し、二つ懸念を抱いている。一つは超一流のセッターの不在、もう一つはブロック時の腕の構え方、一瞬の手の開き方といった「細かな技術」の不足だ。それらの要因は、慢性的な優秀な指導者の不足にあるという。
 「代表レベルであっても、繊細で細やかな指導ができる指導者は現時点ではいない。これではいくら有能な選手でも、才能を完全に開花させることはできない」。そんな危機感を覚えた今井さんは、当国バレー協会関係者との話し合いの末、国内の有望な若手指導者を対象とした講習会の開催にこぎつけた。ブラジル五輪委員会からの助成を受け、リオの「ブラジルバレーボール・トレーニングセンター」で31日に第1回が開かれる。これを皮切りに、継続した講習会を催していきたい考えだ。
 「世界一のバレー大国となるため、そうあり続けるために自分の集大成を若者たちへと伝えたい。ブラジルはまだまだ強くなれますよ」と力強く笑った。
 今井さんとブラジルの関わりは、69年のヤシカ海外遠征にさかのぼる。戦後の日本バレーといえば東京五輪で金を勝ち取った〃東洋の魔女〃が有名だが、その中心メンバーを輩出していた日紡貝塚の258試合の公式戦連勝記録を止めた(66年8月)のがヤシカであり、当時今井さんはそのマネージャーやコーチをしていた。
 71年に再来伯した際、「バレー後進国に日本的指導システムの導入を」との現地からの要請を受けて快諾し、日本バレーボール協会からの派遣指導員として73年に渡伯した。全伯27都市を回り、各地のバレー協会で指導法の講習などを行って、競技レベルの向上に尽力した。その後、74年末に一端帰国するものの、ヤシカ駐在員として再来伯し、米国転勤が決まる80年まで地域のバレーチームで指導を続けた。
 83年にヤシカを退社後、再びブラジルに戻り、バレーの指導者としての本格的な活動を再開した。86年から94年までは企業チームであるバネスパのコーチに就任し、92年バルセロナ五輪男子金メダルの主力メンバーの多くを育成、その後の黄金期を支える人材を多く育てた。

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