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JICAサンパウロが〃出張所〃に=遠藤次長「事業変わりない」=何故か名刺は「支所」のまま

ニッケイ新聞 2012年10月6日付け

 JICAサンパウロがついに「出張所」に—。縮小撤廃が度々囁かれてきたJICA(国際協力機構)サンパウロ支所が4年前から、支所から出張所になっていたことが分かった。独立行政法人化に伴い2003年1月、「事務所」から「支所」と名称が変更になり、現在JICAのサイト(http://www.jica.go.jp/brazil/office)では「出張所」となっている。日系社会事業の縮小に伴う格下げなのか。今年JICA職員から受け取った名刺は「支所」のまま。事情を確認したところ、ブラジリア事務所の遠藤浩昭次長の回答は「正式に出張所になったのは08年10月。名称だけの問題で業務内容は全く変わらないので発表しなかった」というものだった。

 JICAサンパウロはこの10年未満のうちに事務所から支所、さらに出張所にまで変わった。「名称変更だけで事業内容に変わりない」と言われても、予算削減に伴う事実上の格下げか——と勘ぐる人がいても不思議はない。
 というのも、04年に小松雹玄サンパウロ支所長がブラジル事務所長に昇任した後、支所長職が1年以上も異例の不在となった。そんな05年にはベレン事務所が閉鎖され、「サンパウロ支所もいずれ閉鎖か」という噂が流れ始めた。ブラジリアの所長がサンパウロ支所長を兼任することが通例になり、09年には同支所がパウリスタ大通りからブリガデイロ・ルイス・アントニオ街へ〃都落ち〃した。
 その間、07年4月に初来伯した緒方貞子理事長(当時)は記者会見で、本紙からの「百周年後にサンパウロ支所が縮小閉鎖されるとの噂が聞こえるが?」との質問に対し、「現時点で廃止は決めていない」「百周年後にはわからない」と明言を避ける回答をしていた。その流れからすれば、今回の〃名称変更〃は閉鎖に向けた下準備との解釈も不可能ではないようだ。
 同次長の説明によれば、ブラジルのように拠点が2カ所ある国はほかになく、基本は一国一事務所。規模が大きいものを「事務所」、小さいものは「支所」と呼ぶ。
 今後は一国一事務所に限り、これらの名称を使用し、国内2カ所目は「出張所」と呼ぶことに決まった。組織改革に伴う事業効率化の一環だという。
 しかし、なぜ4年も経た現在、名刺は「支所」のままなのか。遠藤次長は「統一しないと、という認識はあったが、両方使っている状態で今に至ってしまった」とこともなげに話す。
 「全世界的に日本政府機関の予算はどこも年々減らされる方向にある。サンパウロ出張所の08年の事業予算は4億1千万円、昨年は3億6千万円で約5千万円減。ただし、出張所になったから削減されたわけではない」としている。
 遠藤次長は「ブラジル社会への影響の大きさを考えても、日系社会は重要。政府にもそれは訴えており、業務を減らさずに努力している」と強調した。

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