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郡司農水相=食品輸入規制緩和を要請=ブラジルのバルガス農開相に=緩和へ前向きな一歩か

ニッケイ新聞 2012年10月19日付け

 日本の郡司彰農林水産大臣とブラジルのペペ・バルガス農業開発相が16日、イタリアのローマで開かれた国連食糧農業機関(FAO)の閣僚級会合に出席した折に会談した。福島第一原発の事故の影響で、各国に倣う形でブラジルも日本の農産物の輸入に厳しい条件をつけるなか、郡司大臣は輸入条件の見直しを要請し、バルガス大臣も協力する姿勢を示したという。

 本件の直接担当機関は国家衛生監督庁(ANVISA)であり、管轄は農業開発省ではなく保健省なので、本来はバルガス大臣の担当事項ではない。とはいえ在伯大使館の森田健太郎書記官は「横のつながりがあると思う。一言伝えておくということでは」とし、前向きな一歩ととらえた。
 郡司農林水産相はバルガス大臣に対し、日本で放射性物質の検査を行い、農産物(一次産品ではなく加工品などの意)の安全性を確認していることを説明して理解を求め、ブラジルが設けている輸入規制の撤廃、緩和を求めた。
 これに対しバルガス農開相は、具体的に緩和を要望する品目を日本側が示せば、担当する機関に伝えるとし、前向きに対応する姿勢をみせたという。
 ANVISAが日本からの食品輸入に設けている規制は、事故から一年以上経った今でも全く緩和されておらず、昨年3月11日以降に12都県(福島、群馬、茨城、栃木、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉)で生産された食品以外も、当地到着後に放射能物質のモニタリングが行われている。
 森田書記官は以前から問題になっていたサントス港でのコンテナー滞留問題について、「今年前半は厳しく運用されていたが、最近は通過しつつあると輸入業者からは聞いている」と説明し、事態は解決に向かいつつあるとの見方を示した。
 問題の原因の一つだった、税関の担当者が変更したために検査の運用方法が厳しくなったことについては、大使館がANVISAに申し入れをしたために元に戻っている。だが、ANVISA、税関、港の労働者がストを起こしていたこともその原因だといい、ストは現在もまだ一部続いている状態だ。
 伯政府は原発事故の影響を重くみて全ての食品を対象に規制をかけており、今もその状態が続いている。ただし、森田書記官は「実際に放射性物質の検査で基準値を超える場合があるのは茶、茸類、肉類、水産物などのほんの一部。それ以外の食品は安全だという話が、両国の事務方レベルの間では進んでいる」と話した。

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