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領土問題憂うコロニアの声=2=「領土問題」の捉え方=サンパウロ市 徳力啓三

ニッケイ新聞 2012年10月24日付け

 「ブラジル日本会議」では日系コロニアの方々が、今、日本の領土問題をどのように考えているかを知るために、意見の交換会を2度にわたって行った。
 大方の意見では「日本よ、もっと強くなれ」と言っているように感じた。ブラジルから祖国を眺めていると、なんとなく「頼りない」のが今の日本の姿であるからであろう。新聞やテレビで伝えられる「日本」は、景気が悪くて老人ばかり、自然災害にやられ放射能に苦しめられ、果ては近隣諸国に領土を奪い取られようとしている「踏んだりけったりの弱い国」という感じを与えてしまっているからだろう。
 それに較べて、ブラジルに住んでいる近隣諸国の民の強いことよ。当地の法律は自分らには関係ないと大手をふるって勝手放題、官憲にコネを通じ、通関は自由自在、大声でわめきちらし、態度はふてぶてしい。その生き方は日系人のおとなしさとは対照的ではないか。「領土問題」の捉え方も、その考え方において似たり寄ったりと思う。
 「日本よ、もっと強くなれないのか」という疑問の声が多かった。「近隣諸国に言われっぱなしではないか。しっかりしろ」という声援が、具体的には「憲法を変えてでも国を護る軍隊を作るべし」となって出てくる。何しろ現憲法前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と記されており、悪意を持つ近隣諸国の善意に日本の安全を託すことになっている。これが現在の日本の憲法であり、「弱さの元」であり、すべての「矛盾の始まり」となっている。これを直さない限り日本は一人前の独立国家にはなれないと、ブラジルで生活しているものには直感でわかのだろう。自分の身は自分で守るしかないという生活の知恵として、体で感じているからだ。
 国と国との付き合いは『力』あるのみ、弱みを見せたら付け込まれるとは、何千年前からの男の法則ではないか。自衛隊はあっても交戦権がなければ、軍隊でないに等しい。アメリカとの安全保障条約があるから大丈夫とばかり、平和ボケしている日本を見るのは哀しい。今まで隣国が攻めて来なかったのは、アメリカの基地が日本の中にあるからではないのか。安保で安全が保たれる時代は過ぎ去ろうとしている。
 「強い軍隊を創設すべき」という人も多数いた。「日本は即、原爆保有国になるべし」ということを言った人もいた。近隣諸国はみな核保有国であるのに、「日本はそんなものは要らないでは国は護れない」というのがブラジルに住む人の感覚であるからだ。
 最後に、参加者の中に一人だけ、「今のままが一番よい」という平和愛好者がいた。なぜならケンカして一番困るのは国民一人ひとりだからだ。「何があってもジッート我慢の子で辛抱して居れば、キット良いことが起こる」という。確かに日本の道徳でも倫理でも、そういう教えをしている。もともと中国ではそういう教えがあったようだが、かの国では数千年の歴史の中で何回も王朝が潰れ、その度に文化が断絶し、殺戮が繰り返されたことか。
 日本は潰れてはならないと思う。世界で一番長い歴史を有する国だ。また、たった一度だけ戦争に負けただけだが、原爆を落とされ、戦争の怖さを知っている国でもある。戦争の無い、大きな、大きな和(大和)の国を創る知恵と経済力をもっている国が日本ではないのか。「日本よ、頑張れ」という応援運動をここブラジルからも起こしていければと思う。

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