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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年12月13日付け

 就職活動の話題で「ブラック企業」はキーワードの一つ。コスト軽減を優先するがために、従業員に心身共に強いストレスを感じさせ、結果的に退職に追い込むような企業のことを言う。こうした存在は、若い世代の勤労意欲を減退させる。数十万に上る勤労世代の引きこもり、国民な精神病である鬱を生む一因でもある▼不幸にも関わり、トラウマになっている人に対して、専門家が出している三つのアドバイスが気になった。「自分が悪いと思うな」「会社を信用するな」。つまり、伝統的な日本的考え方だと自分を追い込んでしまうから、社会に出たら個人主義に徹しろと言っている。まさしくブラジルの常識だ▼責任転嫁せず自己反省したり、滅私奉公を考えるブラジル人は少ない。性善説でやってきた日本人にこの転換は辛いと思う。最後の一つは「諦めるな」。同じ企業で働くにしろ転職するにしろ、日本式に「頑張れ」という趣旨なのかどうか知らないが、諦めたら雇用主の思いのままになると考えるブラジル式に解釈すれば座りがいい。「失った時間や利益を徹底的に回収する」。近年、日本でも労働裁判は増えている▼学校のいじめが取り沙汰されるが、大人の弱肉強食のルールを敏感に感じ取った子供たちが、その訓練を行なっているのではないか。だとすれば全く嫌な社会だ▼日本の厚労省が、低所得者層の肉食化が進んでいることを発表した。アメリカは顕著だが、ブラジルでも収入が高い層が食に関して高い意識を持っておりベジタリアンも多い。格差が進むにつれ、日本とブラジルは感覚的にどんどん似通ってくるような気がする。(剛)

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