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NIATREが閉鎖の危機=予算下りず一年赤字経営=吉岡氏「何とか続けたい」

ニッケイ新聞 2012年12月21日付け

 世界から帰国するブラジル人労働者の相談を受け情報提供する労働雇用省の事業「帰伯労働者情報支援センター」(NIATRE)が昨年1月の開所から2年経った現在、閉鎖の危機にあることがニッケイ新聞の取材でわかった。同省からの事業委託を受けるISEC(文化教育連帯学会)の吉岡黎明会長によれば、もともとは昨年1月から10月までだった契約を3カ月延長され、そこから同省の申し出でさらに2年延長することになった。ところが労働大臣の認可が下りないために、予算約12万レが一年間下りず、赤字で経営されていたことが明らかになった。

 「毎日一定数の相談者が来る。そういう人たちに申し訳ないし、放っておくわけにいかない。色々な人に相談して、何とか続ける方法を探している。いくつかの企業や財団にお願いしたが、無理だろうという返事だった」と吉岡氏は声を落とす。
 労働省からは10カ月間で2千人の対応をすることを目標に10万レ近くの補助金が支給され、10カ月近くになったところで活動を評価し、継続するかが決められることになっていた。
 実際に開所された昨年の1月10日から10月9日までに1897件の相談を受け付けたことから、2014年1月までの継続が決まっていた。
 「書類も全て整えて、あとは大臣、私のサインをすれば官報に掲載されるところまで来ていた。再三電話やメールをしても、もうすぐ出ると言われるばかりで、そこから全く連絡がない」とし、「このままではどうしようもないので、閉鎖するという旨の手紙を、先週労働省に出した」と明かす。
 今年中に返事がなければ、来年からはまた最初から手続きがやり直しになる。「100%(閉鎖が)決まったわけではない」と吉岡氏は強調するが、2012年が終わるまであと一週間となった今、今年分の補助金を期待するのはほぼ無理だ。
 支払われるはずの運営費が支払われなかったため、この一年は職員を3人から2人に減らし、家賃は文協に頼んで半分にしてもらっていたという。多少の援助はあったようだが、いずれにしても借金を抱えた状態だ。
 直接担当機関である労働省内の国家移住審議会(Conselho Nacional de Imigracao)の担当者もNIATRE事務所を2度ほど訪れたといい、「NIATREをモデルケースにして、米国からの帰国者が多いミナス州にも事業所を作るという話だったから、てっきり労働省は(この事業に)乗り気なのかと思っていた」と吉岡氏。だが結果として、それは見込み違いだったようだ。
 なぜ手続きの終盤にきて一年間認可が下りなかったのか。「開所時の労働大臣はカルロス・ルッピ氏だったが、今年5月に交代したことも影響しているのでは」吉岡氏はみている。

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