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黒人イヤーを振り返る=依然として残る社会格差=意識高揚の日も10回目

ニッケイ新聞 2013年1月1日付け

 米国ではオバマ大統領再選、伯国ではジョアキン・バルボーザ氏が黒人初の最高裁判所長官に就任、黒人歌手の活躍も目立つなど、「黒人イヤー(活躍年)」と呼べる2012年が終わった印象だが、実際は殺人被害増加などの社会格差は歴然と残っているようだ。

バルボーザ氏が国民的アイドルに

 2012年に伯国で最も注目を集めた黒人は、何といっても、メンサロン事件の報告者で、11月22日に最高裁長官に就任したジョアキン・バルボーザ氏だろう。
 それまでは病気治療のための長期欠勤など、マイナス面の方が目立ったバルボーザ氏が俄然注目され始めたのは、8月に始まったメンサロン事件の公判の様子がテレビや新聞で報道されるようになってからだ。
 仲間の判事と激しい議論を繰り返し、元閣僚や連邦議員を前にしても、肩書きに臆する事無く、厳しい口調で断罪する姿は、多くの国民に強い印象を残した。
 その証拠が、バルボーザ氏の顔に似せた仮装用のお面が飛ぶように売れたという事実だ。伯国では、カーニバルで使う仮面に〃時の人〃といえる人物が登場する事が多く、今年のカーニバルは、バルボーザ氏が使う黒いマントと仮面を組み合わせたファンタジアが全国各地で見られそうだという。

〃意識高揚の日〃も10回目に

 パウマーレスと呼ばれるキロンボのリーダーで、黒人開放の士とされたズンビーが亡くなった11月20日が〃ジア・ナシオナル・ダ・コンシエンシア・ネグラ〃に定められたのは、2003年1月9日。この日は黒人の日とか黒人の意識高揚の日と呼ばれ、12年11月20日は10回目の節目の時となった。
 聖市にあるズンビー・ドス・パウマーレス総合大学(Unipa-lmares)は、03年11月20日に単科大学として開学。2004年開講で、教授も学生も黒人中心という珍しい大学はやがて総合大学となり、オバマ氏が米国大統領に初当選した時には全学を上げて我が事のように祝った。ヒラリー・クリントン国務長官が初来聖時に訪問した事でも知られ、12年9月には法学部初の卒業生を送り出した。
 また、黒人の意識高揚や格差是正のために貢献した人々を表彰するために、同校と黒人系伯国人の文化と社会発展協会(Afrobras)が11月19日に共催する黒人杯授与式は、聖市の公式行事にもなっている。
 12年の黒人杯授与式は第10回目で、米国の公民権運動指導者でノーベル平和賞なども受賞した故マルチン・ルター(ルーサー)・キング・ジュニア氏も顕彰。次女のバーニスさんが代理受賞のために来伯した。

黒人や褐色人を巡る問題

「これほど多くの黒人系伯国人や黒人系米国人が、貧困や犯罪の狭間で生きている間は決して満足してはならない」

 バーニス・キングさんは11月19日の黒人杯授与式で、オバマ大統領が選出されてからの米国の事などを語った後、「これほど多くの黒人系伯国人や黒人系米国人が、貧困や犯罪の狭間で生きている間は決して満足してはならない」と発言。父同様、人権問題に取り組み、世界中を駆け回る彼女ならではの言葉だ。

伯国の黒人と貧困問題

 伯国の黒人は、奴隷として連れて来られた後、多くの戦いを経て自由を得たという歴史故、経済力や教育の機会を持てない人も未だに多い。
 経済力と教育の機会は互いに関連しているため、経済力がなくて充分な教育を受けられなかった人は、能力や実力があっても良い仕事に就けず、経済力が伸びないという悪循環を断ち切る事は難しい。
 この事を示す例の一つは所得格差で、11月20日付フォーリャ紙によれば、黒人と褐色(パルド)(以下、両方合わせて「黒人」)と非黒人(白人や黄色人)との所得差が7大都市圏最大の大聖市圏では、黒人男性の時間給は6・93レアルで、非黒人男性の11・53レアルより39・89%少ない。
 黒人が多い職種は建築現場や家政婦など。ポルト・アレグレ大都市圏で家政婦として働く黒人女性は23・4%に及ぶが、非黒人女性は10・3%で13・1%ポイントのがある。
 それでも人種による給与格差は縮まってきており、2009年と11年のサルバドール大都市圏では、非黒人男性の給与が18・78%、非黒人女性の給与が19・52%減だったのに対し、黒人男性の給与は1・65%、黒人女性の給与は5・12%増えた。
 11月18日付フォーリャ紙には、2002年と12年の黒人の総収入は1581億レアルから3529億レアルに123%増えたが、非黒人の総収入の増加は、2721億レアルから3295億レアルの21・1%だったとある。
 この数字は黒人系が総人口の50%を超えた事なども反映しており、人口の52%を占める一人当たりの家庭収入291〜1019レアルの中流階級に新規参入した4千万人の75%は黒人。02年は38%だった中流階級に占める黒人の割合も、12年は52%になり、徐々に改善中だ。
 大卒の黒人と、大学在籍者や中退の黒人は各々3%程度で、教育の機会均等とはいえない状態が残るが、12年8月に裁可された大学の社会枠では、定員の50%を公立高校出身者に確保。その50%は黒人系、残り50%は低所得者に割り当てられ、徐々に改善されてきている。

黒人の殺人被害が増加

 他方、所得の改善のような数字が出ていないのが犯罪との関係で、2010年の黒人の殺人被害者は、黒人人口10万人当たり36人で、白人の殺人被害者の10万人当たり15・5人と比べると132%多い。
 白人の殺人被害者は2002年より減ったが、黒人は増えたのも気がかりな点だ。白人や黄色人が警察署の前を通っても止められる事は少ないが、黒人が通ると犯罪者ではないかと疑われるとか、警官が身体検査などを行なう相手は黒人青年が多いといった情報もこの傾向と関係がありそうだ。
 人種による格差が徐々に縮まり、黒人イヤーとの言葉まで出てきた12年はもう終わり。新しい年、黒人パワーはどこまで伸び、社会格差はどこまで縮まるか。

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