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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年2月6日

 外務省在外ブラジル人コミュニティ担当のイザベラ・ソアレス局長は講演会で、金融危機以前には推定312万人もいた在外ブラジル人が今は252万人となり「この3年間で大きく減った」と報告した。それを聞き、むしろ「まだそんなにいるのか」と内心驚いた。19%しか減っていないからだ▼日本のデカセギは危機前には31万人だったのが、現在は約20万人だから35%も激減。なぜデカセギの減少率が2倍近くも高いのか不思議だ▼同局長の分析では不況の深刻なスペイン、ポルトガル、イタリアから逃げ出して、比較的好況な英国に集まる傾向がここ数年ある。ただし、欧米在住ブラジル人の7割以上がビザなし就労者なので正確な数が掴めないとも。「日本の場合は大半が合法就労という〃特殊〃な状況」との言葉に考え込まざるを得なかった。世界の在外ブラジル人の中でデカセギは「恵まれている」と言っている訳だ▼日欧米在住のブラジル人は200万を数えるが、危機でも帰らない人たちだ。在日ブラジル人の半数はすでに永住査証に切り替えた。ブラジルは近年最低の失業率を誇り、技能労働者不足が問題となっているのに、だ▼同局長に「なぜ彼らは帰伯したくないのか」と尋ねたら「外国生活に慣れ、子供もそこで育って絆が生れたから」と他人事のような答えが返ってきた。それも理由の一つだが、彼らだって本心は生まれ育った場所に戻りたいはずだ。治安、経済の安定など先進国並みの生活——という条件が揃えば、だが…▼当地の国内総生産が世界6、7位というのは実体がない数字だと痛感する。在外ブラジル人が続々と帰ってきた時こそ、本当の意味で先進国並みになった時だ。(深)

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