ホーム | 日系社会ニュース | 東日本大震災3回忌=被災地を忘れないで=岩手、宮城の高校生が証言=約2百人が静かに冥福祈る

東日本大震災3回忌=被災地を忘れないで=岩手、宮城の高校生が証言=約2百人が静かに冥福祈る

ニッケイ新聞 2013年3月12日

 「被災地のことを忘れないで」—。9日午後に文協大講堂であった『東日本大震災3回忌法要・追悼式典』では、「高校生平和大使」として来伯中の高野桜さん(18、福島)、佐々木沙耶さん(同、岩手)による震災体験の証言が行われた。復興が進まない現状を切々と語る悲痛なメッセージに会場は静まり返った。ブラジル日系社会からは約6億円の義損金(本紙調べ)が送られ、戦後ララ物資以来の母国支援となったが、震災発生から2年経った今式典の参列者はわずか200人足らずと記憶の風化を印象づける結果となった。

 福島県南相馬市の原発から15キロ地点に実家があり、現在も家族離れ離れで仮設住宅での生活を続ける高野さんは「何もない状況で避難し、毎日不安にさいなまれ、いまだに会えない友人もいる」状況のなかで「日常生活の大切さを感じた」と話す。
 2012年4月に警戒区域解除となったが、現在でも除染も始まらず水も電気もなく住める状態ではない。「2年経った家にはネズミが住みつき、ごみも捨ててはいけないため、瓦礫の撤去も進んでいない。福島県民は帰れないし、帰れる見込みもない状況だということを知ってほしい」と訴え、「偏見もあるが元気で生きている。復興に向かって頑張っていることを忘れない」と話した。
 「今でも辛いが体験を話すのが使命」という佐々木さんは震災時、家にいた。地鳴りが響き、波が迫ってくるのが見えたため、近くの小学校に避難し、九死に一生を得たが、自宅は流され、仮設住宅住まいが続く。
 「風評被害もひどく、水産業は大きなダメージを受けている。町は瓦礫の山で撤去は進まない。ニュースでは復興が進んでいるというが、実際は違う。私たちの声を聞いてもらいたいし、ブラジルからの支援には感謝している。これからも被災地を忘れず、温かく見守ってほしい」と力を込め話した。
 式典では、福嶌教輝在聖日本国総領事、被災県を代表し福島県人会の永山八郎会長が挨拶。司会を務めた文協の山下譲二副会長は「本日も多くの方から義捐金が寄せられた。文協が責任を持って日本に届ける」と報告、締めくくった。
 式典前には、仏教連合会による仏式の法要が営まれ、参列者らは焼香で手をあわせ、被害者らの冥福を祈っていた。

image_print