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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年3月22日

 先々週、グローボ局ニュースでベネズエラ首都カラカス入りした特派員が、驚いた様子で「ここではガソリンの値段が水の8分の1だが、スーパーの棚には基礎的な食料品すら不足」と伝えていた。チャベス派支持のタクシー運転手が「ガソリンの値段を上げることは、アンチポプラル(反国民的)だ」とのコメントを発したのを聞き、チャベス人気が実に不健康な経済に支えられていることを実感した▼チャベスは石油会社など基幹産業を国営化して経営効率を悪化させるなど国家財政を傾かせ、経済全体を混迷に導きつつある。国内総生産の9割を石油輸出に依存し、その利益を貧困層の医療や教育に注いで大衆の支持を拡大してきた▼98年に彼が左派大統領として登場して以来、南米では次々に左派政権が樹立した。貧困層への施策を厚くして支持層を拡大する考え方は、ルーラ前大統領がコピーした。これが社会主義なのか大衆迎合なのか、議論が分かれる▼チャベスは米国を帝国主義と罵る一方で、自分を批判するマスコミを次々に潰すという言論弾圧も行ったので〃独裁者〃との批判も受けた。この辺はクリスチーナ亜国大統領が真似した▼チャベス後継者を決める選挙が4月14日に行われるが、経済混乱期には独裁者や大衆迎合的政治家が選ばれやすいのは歴史の教訓だ。そこで「良薬口に苦し」的政治家を選べるかどうかは、その国の民主主義の成熟度を試すリトマス紙だ▼思えば、教育水準が世界最高級の日本だって、歪な国家財政を正すことを正面切って言う政治家は出てこない。もしかして選挙で代表を選ぶ「民主主義」という制度自体の限界が、その辺にあるのか。(深)

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