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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年4月10日

 サッチャー元英国首相の死去が大々的に報道されている。亜国からすれば1982年のマルビナス(英国名=フォークランド)戦争時の憎き相手だ。ブラジルも同戦争に密かに関係していたと昨年明らかにされた▼米国の支援を受けた英国と戦うという冷戦の構図から、ソ連・キューバが亜国支援に裏で乗り出していた。本紙昨年4月4日付け2面「マルビナス戦争30年=ブラジルの真相が明らかに」でも、ソ連が亜国の核開発のために濃縮ウラン100キロを送るとの文書が残されていると報じた▼ブラジルの立場は実に微妙だった。亜国は隣国で、同じ軍事政権だ。一方、ブラジルにとって英国は独立前から関係が深く、米国は第2次大戦以降、最重要パートナーとなった▼1833年から同諸島の亜国領有を認めているブラジルは、その支援のためにペルー、リビア、アンゴラからの戦略物資を載せた飛行機の領空通過を許可した。しかし、ソ連の物資を載せたキューバ機が無許可通貨しようとした際は、戦闘機が発進させて強制着陸させたという▼南米から革命の火を起こそうとしたゲバラがボリビアで殺された後、手を拱いていた共産陣営からすれば、マルビナス諸島紛争は亜国を自陣営に引き入れる絶好の機会だった。もし亜国が原爆を持った共産主義国になっていたら、ブラジルの歴史も変わっただろう▼男以上に漢(おとこ)であった彼女らしい名言として、同戦争派兵を決める閣議で躊躇する男性閣僚らに向かって「この内閣に男は一人しかいないのですか!」と言い放ったのは有名な話だ。亜国も女性大統領だがウルグアイ大統領から「ババア」扱いされたばかり。まだしも女扱いで良かったか?(深)

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