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岐路に立つ援協のあり方=ブラジル社会が求める存在に=公益登録可否の返答目前=剥奪なら5千万レ追徴も

ニッケイ新聞 2013年4月25日

 「公益団体登録がうまく行くかどうかが、援協にとっての大きな境目となります。会員の皆さんにもその危機感を持っていただきたい」。サンパウロ日伯援護協会(菊地義治会長)は20日午前に評議員会、午後に定期総会を行い、決算報告をした佐々木弘一会計理事は、そう理解を呼びかけた。同登録は医療福祉団体に対して連邦政府の税金を免除するもので、2009年分まで認可済みだが、10年以降の3年分に関して昨年6月に登録申請書類を出した。その返答が早ければ6月、遅くても8月には来るという。その結果次第で、援協の将来に大きな影響が出るようだ。

 援協の経営中核は日伯友好病院であり、その余剰金で本部や七つのホームや事業所の赤字を補っており、剥奪されれば全体が赤字に転落する可能性がある。菊地会長は挨拶の中で、「公益団体の認定取得は死活問題」との認識を持つよう呼びかけた。
 昨年から会計監査を任せているPWC独立監査法人から、剥奪の場合は10、11、12年度分の税金を溯って追徴される可能性があるとの指摘を受け、それに備えて5千万レの「積み立て」をするように要請された。しかし援協は、剥奪されても資産が充分にあるとの判断から積み立てしないことを選択した。
 同会計理事によれば、PWCは援協が伯字紙に収支報告を出す際、監査法人のコメントとして「積み立てすべきとの助言をしたが、資産状況が良いため例外的に認める」との一文を入れると言われたと報告した。そのようなコメント付きで新聞公表されることは名誉なことではない。
 公益団体登録が承認されるための条件は主に次の二つ。(1)病院の総売上の20%を無料診療にするか、(2)友好病院240床の60%をSUS患者に使わせるか、どちらかを満たす必要がある。(1)に関して10年で友好病院は売上の5%、11年で4・8%、12年で5・7%を充てているが必要条件を満たしておらず、「実際に20%にすれば赤字転落は必至だ」と関係者はため息を漏らす。
 総会で報告された昨年度の当期利益は1705万レもあるが、佐々木会計理事によれば、もし剥奪されれば毎年税金を1500万レ以上払う必要があり、ほぼ利益はなくなる。現在進めているサンミゲル・アルカンジョ市やグアルーリョス市のSUS病院建設に回す余力もなくなるという。
 昨年6月に団体登録申請した書類では、サンミゲルやグアルーリョスにSUS病院を建設して、SUS対応病床を増やす方向性を強調した。さらに当地では先駆的な自閉症児療育学級の存在が、連邦政府から高く評価されていることもあり、現時点での目標達成は無理でも将来的には達成するとの計画で、理解が得られないかと訴えている。
 ただし、PWCの意見では「楽観できない」としており、「万が一に備えて積み立てを」としている。菊地会長は「援協は新しい道を切り開く転機に差し掛かっている。これからはブラジル社会から求められる事業を増やさないと存続できない」と語った。

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