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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月24日

 1982年のある晩11時、黒革の手袋をはめた神経質そうな男が聖市南部の酒場に一人でやってきて、ウイスキーならぬ「レイチ(牛乳)をくれ」とガルソンに注文した。犯罪者を狙った連続殺人事件が巷の話題をさらっていた時期だ▼その男は目の前に置かれたレイチの上にはった膜が気になり、指で取ろうと手袋を外して指をつっこんだところパーッと赤い輪が広がった。隣にいた女性はその光景を見て血が引く思いをしたという。有名な「カーボ(兵長)ブルーノ」の逸話だ▼いわゆる軍警の一兵卒だが、80年代前半に50人もの犯罪者を殺した〃ジュスチセイロ(義賊的殺人者)〃として知られる。19日付けエスタード紙は彼の生涯が来年映画化されると報じた。彼がルーラ大統領に22頁に渡って書いた手紙には「泥棒や強姦魔を何度捕まえて警察に連行しても(警察内部の汚職のため)すぐに釈放された。被害者がそのたびに泣く姿を見て私は爆発した。耐え切れずついに自分の手で正義の鉄槌を下す決心をした」とある▼伯国法務省の発表では11年に50万件もの殺人事件が起きたが、解決したのはわずか8%だった…。同記事によれば最初こそ義憤に駆られて始めたが、そのうち依頼者から金を受け取り「ブルーノは殺すのが楽しくなったと告白した」とある▼正義感溢れる義賊のつもりが、殺す相手より遥かに凶悪な連続殺人犯に堕ちていった鬼っ子ような存在だ。21年間を獄中で過ごすうちに改心して牧師になり、昨年9月の出獄直後、何者かに18発をぶち込まれ53歳でなくなった。天使と悪魔が同居した強烈なその生涯を映画はどう描くのか。(深)

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