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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月29日

 経済記事を読んでいて、ふと疑問に思うことの一つが人口問題だ。資本主義経済では人口が増えないと市場が拡大しないから、日本のように減少に転ずると明るい将来がないかのように語られ始める。これはどこかオカシイ▼地球上の資源は有限であり、特定の生物だけ無制限に増えることはありえない。本来は国連のような国際機関が、地球人口の適正規模を発表し、現在の生活を数千年以上維持できることを前提に「何十億人以上はダメ」と警告すべきではないか。特定地域で爆発的に人口が増えることは「市場の拡大」ではなく、有限な地球環境における「人類のガン細胞化」とも考えられないか▼その国の経済が順調かどうかを図るモノサシとして国内総生産の成長率や規模が比較され、大きい方が良いとされる。ある程度の成長は必要だとしても、長いモノサシも同時に持つべき時代になった▼環境との調和を考えたときに基準にすべきは、経済の「拡大」より「安定」だろう。それゆえ「持続可能性」という言葉も聞かれるが、すでに豊かさを享受した先進国の国民はまだしも、ブラジルのような新興国では「今度こそ自分たちが享受する番」と待ち構えている人も多い▼我々の食生活の豊かさは江戸時代の殿様以上ではないか。先進国並みの豊かさを地球の全員が享受するのは不可能だし、今の経済発展を千年後も続かせるのは難しいと聞く。原子力発電にも大きな疑問符がついた。一千年は人類の歴史から考えたら長い期間ではない。それを見通せない経済のあり方はどこかオカシイ気がする▼自然との調和を重んじる日本的な発想でこの根源的な疑問の解決策を考えられないか。(深)

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