ホーム | 日系社会ニュース | 人文研よ、どこへゆく?=消防法で移転を余儀なく=来月中に元県連事務所へ=史料館との軋轢のすえ

人文研よ、どこへゆく?=消防法で移転を余儀なく=来月中に元県連事務所へ=史料館との軋轢のすえ

ニッケイ新聞 2013年6月28日

 消防法の遵守により館内施設の改修を進めている文協が、避難通路確保のため、同会館3階にあるサンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)に移転を迫っていたことが本紙取材で分かった。人文研側は同階にある元県連事務所への移転を希望。しかし、「着物の収蔵庫を作りたい」とするブラジル日本移民史料館と、水面下の軋轢が生まれていた。同ビル唯一の店子でもあり、一時は館外に移転先を探していた人文研だったが、本山理事長が人文研の主張を書面で文協側に送付したことで状況は一転、要求が通る形となった。木多喜八郎文協会長は「問題を早く解決したかったし、人文研の思いを改めて知ったことで、考えるところがあった」と話している。

 消防局から指摘されているのは、3階エレベーターの入り口から、フロア最奥に位置する非常出口までの避難通路が確保されていないことだ。
 その直線上には、人文研事務所兼図書室がある。通路確保のためには壁を取り壊し、部屋面積を縮小させる必要があることを受け、文協は立ち退きを打診、人文研との間で話し合いが続けられていた。
 史料館を管理する文協の当初の案は、人文研を同階にある「足跡プロジェクト」事務所(31号室)に移転させ、県連元事務所に、未整理の史料や「足跡」の事務所を移すというもので、史料館もこれに賛同した。
 これに対し人文研側は「(31号室は)日差しがきつく、雨漏りもある。史料や図書を保管する環境ではない」として難色を示し、元県連事務所を使用する提案をしていた。同じく、史料館も使用を希望。お互い譲らない両者の意見が平行線を辿っていた。
 この状況を受け、文協関係者は今月24日に人文研、翌25日に史料館の関係者が会合し、人文研の提案を受け入れる方針が決まったようだ。
 24日の会合に出席した山下リジア史料館運営副委員長は、本紙の取材に「長年付き合いのある人文研が出て行く事態は避けたかった」と話しながらも、「(元県連事務所に)着物の収蔵庫を作る計画が白紙になった」と残念顔を見せる。
 人文研から明け渡される部屋については「面積を考えるとどう使うか…これから考える」とため息をついた。

image_print