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ざっくばらんに行こう!=ニッケイ新聞合併15周年記念座談会=(10)=購読料の半分が配達経費に

ニッケイ新聞 2013年9月11日

深沢=僕らとしては、若松さんが言われたみたいに、ここに住んでいる人間として見聞きした経験から「今現れている現象はこういう兆しじゃないのか」というような経験から絞り出した部分で、勝負していくしかないわけですよね。
田村=
それが出来れば大したもんだなあ。
深沢=できればいいんですが、難しいところで。
若松=
吉田さんがいうように、諸外国と比較しても、日本政府は文化普及関係に使う金は少ないよね。あれが多くなってくれれば、こういう方向にも伝わってくるんだろうけど。今の日本は何とまあ借金がいっぱいあって、政府はもう全然そういうところまでお金出せないでしょう? 逆にますます切られていくような状態だから。その辺で日本の政府はあてに出来ないんだな。
吉田=進出企業にも、日系社会のために日本語普及のために「我々のエネルギーを還元しよう」とか「利益を還元しよう」という意識は芽生えないのかね? 日本企業はダメですかね。
若松=だいたい日本の企業っていうのはイチイチ「こういうことしたいけどどうでしょう」って日本にお伺いをたてるんですよね。そうでしょう? イチイチ聞いて、返事が返ってきてから、こうですか、ああですかって。現地の決定権があまりない感じね。皆本社の命令で動くんであって。
 だからお金も、日本が金持っているときに出てくるものであって、日本の景気が悪くなると一つも出てこなくなる。だから進出企業それ自体がね、企業が進出してくるかどうかは、日本の経済状態によって決まってくるんですよ。こっちが良いから悪いからで決まってくるんではなくって。
深沢=編集部でもポ語で日本食関連のガイドブック出そうというアイデアがあって、国際交流基金なら助成制度があるかもと聞いたら、日本で出版されたものを翻訳するなら助成するけど、こっちで独自に文章を書いて、ポ語で出す場合は何の助成もないわけですよ。地元主導で日本文化をポ語で広めようとした時に助成制度はない。
吉田=
「翻訳ならOK」っていうのは実におかしいね。こちらの人間向けに、現地で分かりやすく書き直そうと手間をかけると支援しなくなるという考えは、矛盾している。
深沢=そうなんですよ。不思議な話ですが。なんとかそこら辺を試行錯誤しないと。
若松=
試行錯誤、大変ですね。
吉田=あと、配達が良くないね。なんとかならないかね。
深沢=配達の問題はほんと頭が痛い…。配達は社長が管理している部門なのですが、編集部としては再三、苦情を言っているんです。かつて配達はサンパウロ市近郊は自社配達人、残りはすべて郵便でしたが、今は地方部は総てトランスフォーリャ社に委託しているんです。ベレンでも翌日に届くという画期的なシステムなんですが、とにかく料金が高い。日本の23倍の面積に新聞を配達するわけですから、その手間と費用は尋常じゃない。
 社長から聞いたんですが、この配達にかかる経費だけで購読料の半分ぐらいになるんですよ。まるで配達会社を儲けさせるために発行しているような状態なんです。
 サンパウロ市近郊だけは自社モトケイロが配達しているのですが、だんだん読者が減っているので、一つの地区における配達箇所がドンドンまばらになっていくんですね。そうすると、一晩に200軒とか配達するには、より広い地域を走り回らなくてはならない。いまじゃ真夜中に150キロも走り回っているそうです。そうするとアサウトに遭ったり、バイクが故障したり、雨に濡れて病気になったりする。そして突然「辞めた」とか言い出す。で、給料が安いから後任がなかなか見つからない…。
吉田=
だとしても配達されなかったら読者としては怒るよ。もうちょっとなんとかせにゃいかんな。
深沢=配達は新聞社の〃アキレス腱〃ですよね。言い訳ばかりで、本当にすみません。実に耳が痛いです。15周年を気に編集部一同、気合を入れなおして更に読み応えのある紙面にしていければと思います。OBの皆さん、貴重な意見を長い時間ありがとうございました。(終わり)



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