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商議所部会長シンポ=(上)=景気の停滞続く見通し=ペトロブラス不振も影響

ニッケイ新聞 2013年10月1日

 ブラジル日本商工会議所(藤井晋介会頭)が主催する2013年度下期『業種別部会長シンポジウム』が8月20日午後、「どうなるブラジル経済 持続的成長に向けて」を副題にサンパウロ市内のホテルで行われた。進出企業関係者を中心に160人以上が出席し、11の部会から発表された各業界の動向を熱心に聞き入った。
 金融部会は「あまり明るいメッセージはお伝え出来ない」との山崎展生部会長の言葉から始まった。上期の回顧を「経済停滞が継続、インフレ、レアル安が進行、政治面でも不安定要因が発生」とまとめた。
 自動車などの好調な分野もある一方で、小売はインフレ進行による実質所得の減少等に伴い減速。全体としてこれまでの成長の原動力だった個人消費の勢いが弱まった。
 加えて、6月の抗議デモの影響を受け、企業活動、消費行動でも投資・消費を遅らせる、あるいは止めるという動きが見られると解説した。
 今後の展望については、「これが悲観のピークで回復に向かう見方もある」とする一方で「インフレは一段落するが、レアル安の影響などにより景気後退のサイクルに入る可能性もある」と慎重な姿勢を崩さなかった。
 コンサルタント部会の関根実部会長は、上半期終盤に頻発したデモについて「エジプトやトルコなどで起きているものとは根本的には違う」と言及。反政府・反体制ではない「自然発生的デモ」として、「短期的に見れば損失だが、民政移管から28年経過した中での、民主化の歴史の通過点としてみれば長期的には良いこと」と話した。
 今後のブラジルの継続的な経済成長のためには「民間企業の競争力をつけて、国際市場に打って出ていく必要がある」とし、「インフラの整備」「税制の簡素化」「労働の自由化」が不可欠だと強調した。
 機械金属部会(相原良彦部会長)からは、ブラジル最大の企業ペトロブラス社の不振が、社会インフラ関係の低調さに繋がったことが報告された。同社の大型の投資案件に遅れが出たことで、業界全体が不調に陥り、水不足による電力危機があったにも関わらず火力発電プラントの整備が十分に進まない、環境保全設備の導入計画も具体的な進展がないなどの影響が出ている。
 今後の展望として相原部会長は、「6月のデモ騒動の影響もあり、短期間での経済のV字回復は見込めない。ペトロブラスの業績の悪化による大型投資案件のさらなる遅れも懸念される」と話す一方で、「デモで急かされたことで、都市交通関係、道路、空港の拡張などのプロジェクトはどんどん進んでいくのでは」との見方を示した。(つづく)

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