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故郷の石で日本地図パネル=伯日青年会議所が制作=「帰国果たせぬ無念の先人に」=若い世代中心に企画実行

ニッケイ新聞 2013年12月19日

写真=パネルの左が児玉JCI事務総長、パネル右が間部日伯青年会議所会頭








 「帰国の夢を果たせなかった無念の移民に、故郷の石をプレゼントしたい」——そんな思いを形にしたのは、ブラジル日本青年会議所(間部ジュン・ラファエル会頭)の「里帰り 日本とのふれあい」プロジェクトだ。各県の本物の石で作った日本地図のパネルのお披露目会が16日、サンパウロ市の文協ビル貴賓室で盛大に開催され、同プロジェクトを応援した関係者ら200人あまりが完成を祝った。2・1メートル四方のこのパネルは、文協ビルの入り口の廊下に展示される予定。

 幼少で移住し一度も帰国していないハシヤマ・マサエ・デ・ソウザさん(89・京都)=リベルダーデ在住=はお披露目式に招待されて、「このようにオメナジア(顕彰)してもらって嬉しい」と笑顔をみせた。
 故郷に帰る代わりに「本物の石に触わる」とのアイデアは、国際青年会議所(以下JCI、本部・米国)の児玉明敏エジソン事務総長の実体験から生まれた。一世が各県の天然石に触れることで、象徴的に里帰りを果たしてもらうと同時に、まだ日本を訪れたことのない次世代にも、先祖の苦労と故郷への思いを感じてもらいたいという。
 児玉さんは86年に祖父の故郷・鹿児島県に留学した際、飛行機から富士山と、鹿児島の桜島を見た時になぜか涙が出たという。5年で帰国する予定で渡伯して一度も故郷の土を踏まずに逝去した祖父母のことを思い出したからだ。祖父母の生まれ故郷から浜の砂を持ち帰り、仏壇に供え、父の兄弟に配った。
 その経験から、帰国の夢が叶わなかった移民のために全県の石を集めたいという、祖先の開拓精神と苦労への敬意をこめた今構想につながった。
 47都道府県の天然石を集めるために、ブラジル日本都道府県人会連合会から日本青年会議所の各地域にある支部へ協力依頼の手紙を出した。園田昭憲県連会長は、「このような事業が、若い世代によって行われることに感動し、共感を覚えた」と冒頭にあいさつをした。在聖日本国総領事館の福嶌教輝総領事は日葡両語で、青年会議所の仕事をたたえ、こうした交流によって日伯関係がより近づくことを期待すると語った。
 日本側で各県の石を集める作業に協力した日本青年会議所を代表して国際部委員長の山田拓也さんが来伯し、「移民の方々の開拓精神には今の日本の自分たちが学ぶべきことがある」とコメントした。最初こそ不安だらけだったが、県連の手紙に各地の支部が協力を申し出て、結局は2カ月ほどで石を集めることができたという。
 07年から温めてきた計画だったが、多方面からの協力をうけ実現できたと、ブラジル日本青年会議所の間部会頭が満足な表情で感謝した。

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