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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年1月11日

 有名な法律家がクルトゥーラTV局のニュース番組で嘆いていた。「ブラジルは法律マニアだ。法律さえ制定すれば、その案件は解決すると思ってどんどん作る。問題は、いかにその法律を守らせるかであって、どんな法律を作るかではない」。実に腑に落ちる話だった。ポルトガル人がそうらしく、その〃伝統〃を受け継いだのだとか▼興味深かったのは、次の発言。「88年憲法が発布されてから、現在までにいくつ法律ができたか知ってるか? 実に250万以上の条文が市、州、連邦議会で可決された。でもその分、世の中は良くなったか? 物事は禁止すれば良くなる訳じゃない。大事なのは、際限なく細かく決めていくのではなく、要の部分を制定してそれを完全に守らせること」と力説していた▼本来「法律の制定」と「守らせる方法の具体化」は一心同体のはずだ。法律が増えるのに比例して、法を守らせるべき機関要員や警察が増えていけばバランスはとれる。でも際限なく公務員を増やせば財政は破たんするから、法律ほどは増えない▼だから、時間が経って法律が増えるほど「守らせる側」が相対的に〃手薄〃になるという逆説的な状況が生まれる。何事にも限度はある。ある意味、多すぎる法律は、少ないのより始末が悪い▼根本的な問題は、順法精神を子供のころから教え込む「教育」が圧倒的に不足している点だ。いくら法を作っても、守ろうという気持ちが国民にないから違法行為や犯罪は減らない。こう考えるとすべての問題は「教育」に帰結する。すごく当たり前の結論にしかならない。きっと物事に奇抜な解決方法はないのだ。(深)

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