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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年1月16日

 イグアッペ在住の荒井貢さん(80、山形)からパステル作り30年の話を聞きながら、深い感銘を受けた。「小さい時からうちのパステルを食べてきたブラジル人で、もうサンパウロに出たような人が、たまにイグアッペに帰ってくると、店に食べに来て『チオ! 覚えてるか』って、よく言われるんだ。すごく嬉しいよね」▼フェイラのパステル屋なら普通20種類ぐらいの味を揃えている。でも荒井さんはケイジョとカルネだけをひたすら作って3男1女を育て上げた。NHK連続テレビドラマ『カーネーション』のモデルになった有名服飾デザイナーのコシノジュンコが以前、「日本文化は消去法の美。できるだけそぎ落とした先にある境地」と言っていたのを思い出した。パステル作りを〃道〃的に解釈するならば、荒井さんの二種は日本的な究極を思わせる。荒井さんが愛する川柳もまさに、言葉を削った先に残った17文字の文学だ▼今でもかなりパステル屋は日系人経営が多い。106年間の移民史の中で、親のパステル稼業のおかげでどれだけの数の二、三世が大学を出たかと思えば、実際、気が遠くなるぐらいの数ではないか▼洗染業、フェイランテ同様、日系人の生活を支えてきた職業だ。パラナ州ローランジャの開拓神社にはエンシャーダやマッシャードが祭られている。荒井さんの話を聞きながら、聖市に「パステル神社」があってもいいぐらいだと感じた。カトリック教会の移民の日ミサでも農産物を奉納することがあるが、中華鍋やマッサを伸ばす棒を奉納してもいい。そのおかげで大学進学できた二、三世が先祖の苦労に想いを馳せる場になればと思う。(深)

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