ホーム | 連載 | 2014年 | 「社会に開かれた日語教育を」=聖南西日本語教師研修会 | 「社会に開かれた日語教育を」=聖南西日本語教師研修会=(上)=松原教授が歴史踏まえ提言=今後のあり方を模索

「社会に開かれた日語教育を」=聖南西日本語教師研修会=(上)=松原教授が歴史踏まえ提言=今後のあり方を模索

ニッケイ新聞 2014年2月14日
講義をするモラレス松原礼子教授

講義をするモラレス松原礼子教授

継承か、日本文化普及のための日本語教育か―。日系子弟の生徒が減少し、アニメなどから日本語学習をはじめる成人学習者が増加傾向にあるなか、今、コロニアの日本語教師は何を目指しているのか。日本語教師が3日間集まり、教授法から学校運営に関することまで講義を受け、意見交換をすることで研鑽を深める『教師合同研修会』(聖南西教育研究会主催、1月23日~25日開催)を取材した。

サンパウロ大学のモラレス松原礼子教授は「ブラジルの日本語教育」と題した講義では、日本語学校がたどった歴史を解説したうえで、日本語教育は〃外国語〃の段階にあることを強調した。

日本語学校が生き残るためには、「当地社会に日本の魅力を説いた教育内容で、当地社会に開かれた学校で、さらに時代に合った学校運営を意識した工夫がされるべき」と語りかけた。

戦前移民が生活をはじめた当初、開拓地には教育機関がほとんどなく、国籍を問わず移民が自ら母国語の教育機関をつくり、子弟の教育に熱心に取り組み、日本語学校は非常に重要な役割を果たした。

松原教授は、30年代の学校の様子を写真などで紹介し、女性が圧倒的に多い現在の日本語教師に比べ、その当時は背広を着た男性職員も多く存在したことなどに、複数の参加者が驚きの声をあげた。公教育が普及した後も、算数など日本語学校で行っていた教科学習が、進学先の当地の学校への橋渡しになっていた部分があり、メリットがあったという。

戦後になってからは、一般社会で成功を目指す二世世代にとって、家庭言語であった日本語の役割が低く見なされるようになり、日本語教育にとってはマイナスに働いた。69年に行われた調査で、「一般社会への統合戦略を図った日系人の90%近くが、日本語学校へは行っていなかった」という結果がそれを物語る。

80年代の日本語学校の形態を分析すると、それらが厳密には「言語の学習の場ではなかった」と松原教授はいう。58年~80年代における全伯合同教師研修の研修項目の約40%が情操教育だった。つまり、日本語学校で行われる多くの催しやその準備は、当地の公教育に欠けていた情操教育の要素を補うものだったと分析する。

研修会に参加する複数の教師から問題提起されたように、日本語教育に価値が見出されず、優先的に学ばれていない現状がある。それに対し、松原教授は「国境を越え生活をする可能性がずっと高くなった現代において、語学を学ぶことは生きていくための戦略」との見方を強調した。

日本語学校が活性化していくためには、「日本人会の意識と学習者の学習動機の差を埋めること」「日本語学校の存在意義をあらためて考えその魅力を再確認し、閉鎖的なものでなく、地域との厳密な連結をつくっていく点」などを挙げ、研修の参加者たちに考えるべきことを提示した。

さらに、日本語学習の魅力のひとつとして、言語を司る左脳と非言語を司る右脳とを刺激し、思考発達に効果的な言語であるとの見方を紹介し、日本語学習の魅力を伝えるための工夫の必要性があるのではと語った。(つづく、宮ケ迫ナンシー理沙記者)

image_print

こちらの記事もどうぞ

  • 福澤一興会長の授業の様子2014年2月15日 「社会に開かれた日語教育を」=聖南西日本語教師研修会=(下)=学習優先度が徐々に低下=問われる方向性や使命 ニッケイ新聞 2014年2月15日 「教師合同研修会」の開催場所は聖州サンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャール。14年ほど前、聖南西地区の日本語学校教師らが、日本語能力をはかるコロニア独自のテストを開発しようと集まったのがきっかけで始まったが、授業についてアイディア […]
  • 新宿日本語学校の皆さん。左から江副ジョエル・フランス語担当、江副校長、松野良子専務理事、マルチネス・ルイス・ホベルト日本語研究家2014年1月24日 新宿日語学校 江副校長が来伯=学習の新しい形アピール ニッケイ新聞 2014年1月24日 日本国内で数少ない学校法人格を有する日語学校「新宿日本語学校」の江副隆秀校長(63、東京、えぞえ・たかひで)が20日に来伯し、聖市の日本語センターや南麻州カンポ・グランデ、パラナ州クリチバなどで教師の指導や講演会を行っている。 今回の講演 […]
  • 本紙編集部を訪れたデニウソン、ギリェルメ、アントニオさん2014年1月22日 日本語をレベルアップ!=基金が大学生研修実施中 ニッケイ新聞 2014年1月22日 国際交流基金サンパウロ日本文化センターが全伯から日本語学習者を招き、「全国大学生サンパウロ研修」を実施中だ。 毎年1月に実施される。参加者は能力別に2グループに分かれ、日本語を使いながら日本文化や日本事情について学ぶ。各研修の最終日、17 […]
  • 日本語使って楽しく体動かす=聖南西地区青空スポーツ教室2018年12月1日 日本語使って楽しく体動かす=聖南西地区青空スポーツ教室  日本語学校のスポーツが好きな13~17歳の生徒が参加する『聖南西青空スポーツ教室』(聖南西教育研究会主催)が11月15日、ピラール・ド・スール文化体育協会のグランドで開催された。  年に5つある生徒参加地区行事の中でも、12月に行われる林間学校とともに生徒がとても楽 […]
  • 伯3州・パ交流日本語お話大会=43人の生徒が学習成果発表2018年11月9日 伯3州・パ交流日本語お話大会=43人の生徒が学習成果発表  第9回ブラジル三州パラグアイ交流日本語お話大会が10月27日、パラナ日伯文化連合会で開催された。パラナ日伯文化連合会主催、パラナ日本語教育センター実施、在クリチバ日本国総領事館、国際交流基金後援。  今大会ではパラグアイの日本語学校は欠席となったが、パラナ州から8校 […]