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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年2月15日

 コロニア最高齢の上地マツさんが1日、110歳で他界された。幼い頃からおばあちゃん子だった孫に看取られ、静かに大往生したという。長寿者にふさわしい、理想的な最期だった▼生き方が人それぞれなら、〃往〃き方も人それぞれだ。今日本で注目を浴びる「終活」は、「就活」(就職活動)や「婚活」(結婚相手探し)にちなんで名づけられたもの。本人が存命の間に葬儀や墓地、財産相続など〃人生の幕引き〃のための準備を計画的に進め、「人生の終焉をよりよい形で迎えよう」という試みだ▼肺カルチノイドという難病を病み、一昨年41歳で早世した流通ジャーナリストの金子哲雄さんは、完璧なまでの「終活」をしてあの世に旅立ち、世間を驚かせた。死後に出版するべく『僕の死に方』(小学館)を執筆し、葬儀の進行や墓の手配、死に装束を存命のうちに準備し、妻の口座にその費用まで振り込んでいたという▼今年の統計によれば、日本の高齢者(65歳以上)人口は3186万人で、総人口の25%と過去最高。寿命が伸びるにつれ、伴侶に先立たれ、人知れず亡くなる孤独死も増えている。当地でも65歳以上は総人口の7・4%、コロニアの一世社会では90%を超えるかも。「人生の終わりをどう迎えるか」は、多くの人が直面しているテーマに違いない▼日本人には「終わりよければすべてよし」との価値観があるように、老いてより豊かな心境に達するのが理想。高齢者施設の充実や、精神的、身体的に健康を保つためのサポートに加え、コロニアにも「最後の心構え」を共に探る場があっていいのでは。熟連、老人会など「より良い死に方講座」どうですか?(阿)

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