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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年3月19日

 「〃W杯特需〃に乗り遅れるな!」とばかりに、開幕会場イタケロン付近の庶民は皮算用に必死らしい。16日付エスタード紙によれば、なんと一月間の賃料39万レアルの物件(3寝室で72平米)まで登場。別の物件では、治安の良くないあの地域で会場まで徒歩40分も離れた4寝室の家を、12万レ(40日間)で貸そうとネットに英語サイトを作っているとか▼その記事に対し、同紙サイトには「この国民にして、この国あり。何かの尻馬に乗って利益を得ようとするのはブラジル人の愚かな文化だ」「そんな金があったら家を買える」など、良心的読者の呆れ果てたコメントが出ている▼サンパウロ市東部は庶民地区であり、彼らが外国人や金持ちに対して持っているイメージがこの値段から透けて見える。十数人のグループがイワシの缶詰状態になって一軒家を借りて過ごし、少しでも安く上げようと考える発想自体がすでに庶民的であり、外国人や金持ちも同じように考えるだろうか、と首をひねらざるを得ない▼なぜこんな値段になるかと言えば、ホテル自体が高くなるからだ。同記事によればサンパウロ市の松原ホテルの一番安い部屋は通常月1万レちょっとだが、この期間中は4万6千レに跳ね上がる。一部屋でその値段なら4寝室で12万レは〃お得〃との発想で値段設定しているようだ▼サッカー狂の気持ちは分からないが、決勝戦もないサンパウロ市にそんな価値があるのか? それよりも、駐車場やメトロとの通路、トイレや売店などを含めたイタケロン会場全体がちゃんと完成するのか、このまま雨が降らず水や電力不足で開幕試合を迎えるんじゃないか――そっちの方がよほど気になる。(深)

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