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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(146)

助手席のアレマンと重なって見える村山羅衆が、
《森口の車に飛び乗った小川との連絡が不通だ》
「混信だ。この通りには多くの低いテレビ塔が大電力送信をして、瞳が乾くくらい強い電磁波が飛びかっている。パトカーの無線もお手あげなんだ」
《これは酷い! 仏界の神技通信も出来ぬ状態だ》
ジョージは森口の車を追って右折してコンソラソン通りを五百メートルほど下った。
《【村山先輩、聞こえますか?】》小川羅衆の声がだんだんハッキリしてきた。
《小川殿、聞こえもうした》
《【森口は奪った車を捨て、運転手付きの車に乗り換え、東に向っている】》
《ジョージ殿、森口は運転手付きの高級車で東に向かってござるぞ》
「高級車?」
《運転手付だそうです》
「それはタクシーだろう。奴は逆戻りしている。行先は東洋街だ」
ジョージ達はニッケンホテルに直行した。ガルボン・ブエノ街に面したニッケンホテルの玄関広場に車を止め、フロントに走った。
「(今、森口が入らなかったか?)」
「(いえ、誰も・・・)」
「ジョージさん、如何した?」川原支配人が受付の後ろの屏風から出て来た。
「森口が逃げ込まなかったですか?」
「いや、彼の荷物はまだ預かっているが」
「奴を見逃したようだ」
《小川殿! お主はどこにおるのじゃ?》
《【森口と一緒に東洋街の商店にいます。看板には五越(いつこし)と書いてあります】》
《森口は五越にいるみたいでござる》村山羅衆がジョージの耳に囁いた。
「(アレマン! 森口は五越商店だ! 急げ!)」
支配人の川原が、
「五越商店? 偶然かなー。と云うのは・・・。今、東洋街で一番話題になっているのが五越商店だ」
「話題とは?」
「大きな借金を抱えた五越商店が倍の高値で買い取られたと云う噂が流れている。買手が分からず、丸山商店のオーナーではないかと・・・」
「倍で?・・・。だとすると・・・そうか、その買手は森口だ。きっとそうだ。盗んだお金を物に替えようとしている」
《森口は人殺しの他に盗人も?》
「二十五億円と聞いた」
《ひぇ~! そりゃー大金だ!》
ジョージと二人の新米刑事、村山羅衆はニッケンホテルから三百メートル程離れた五越商店に向かった。
「(ペドロ、裏を固めろ)」
店の前に小川羅衆が待っていた。アレマンは前を固めた。
「小川は新米刑事達を守ってくれ」
《いやだ、言葉がわかるおめーと一緒に行動させてくれねーか》
小川羅衆はジョージの後を離れずに五越商店に入った。それと入れ替わりにサイズが合わない服に黒メガネ、それに帽子を被った男が出てきた。
不審に思ったアレマンがその男を追いながら、携帯で連絡してきた。
【(モリグチが店を出ました。服を替え、サングラスを掛けています)】
「(確かにモリグチか!)」
【(間違いありません。帽子とサングラスで顔を隠しています)】
「(確認しろ! アクシデントにぶつかって帽子を落とせ!)」
一分後、アレマンが連絡してきた。
【(モリグチではありません! 女です!)】
「(アレマン! かまうな! 女はおとりだ!)」
【(畜生!森口を逃がしました)】
二分後、全員が五越商店の前に集合した。
《村山羅衆がいません》
《拙者は、商店の奥におる、妖怪の小物に取り囲まれ動けぬのじゃ》

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