樹海

 W杯が盛り上がりに欠けるとはいえ、ブラジル代表戦では空気が一変。やはりサッカーの国だなあ、と実感する。コロニアでも日本戦のさいは、様々なところで応援イベントが開かれ、日本代表を応援した。こちらの試合内容はあまり盛り上がるものではないが、何とか次に繋いだ。24日の対コロンビア戦はこれまで以上に応援に熱が入ることだろう▼19日のナタル戦。テレビ中継では、(ブラジル観光省発表の)日本人訪問者数を挙げ、「7千人の日本人サポーターが埋めた」と何度も触れていた。全員が行ったわけではないが、ブラジル在住者もいるから、かなりの数だ。後にも先にもナタルにこれほど日本人が集まることはあるまい。さて18日に文協であった日本移民記念法要。150人ほどが参列、しめやかに執り行われた▼移民の日がW杯開催中にあることはかなり前から分かっていた。これほどの日本人が一時期に訪伯することは100周年でもなかったことだ。日系主要団体で支援体制を作ったことは評価したいのだが、日系社会を知ってもらう取り組みがなかったのは残念だ。時間やお金をかけずとも、ブラジル日本移民史料館を無料開放するなど、やれたことはあったはず▼多くのメディアが訪れ、治安問題を中心に、デモやストを報じた。このニュースを見ている日本人は、ブラジルは危ない国と認識を強めただろう。わずかにいくつかの新聞社が、日系社会や移民の歴史について取り上げていた▼各地で日本人は、ブラジルが親日国であることを実感しただろう。それで十分かとも思うが、その背景への理解を促す何かが欲しかった。(剛)

image_print