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大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(3)=マリリア市創設期の二人=ヴァルガス「ぜひ会いたい」

松原を大統領に紹介したというアルキメデス(国立国会図書館サイトより許可を得て転載)

松原を大統領に紹介したというアルキメデス(国立国会図書館サイトより許可を得て転載)

 マリリアの町自体は1926年12月にピラジュイ司法区カフェランジア郡所属「マリリア管区」となり、翌27年4月1日に市制を敷いた。戦前移民・小針一(こばりはじめ)の手記「マリリア市の興りと邦人初期の移住者の動向」には《マリリア最初のホテルはルイス・ブリト・マニャンエス、その弟が有名なアルキメデス》とだけ触れている。同家は町で最も古い商家の一つだった。
 一方、《松原安太郎がリオ・ド・ペインェの土地に二百アルケーレスを購入したのは一九二八年四月である。同年隣接の土地と共に大アルヴァロ植民地(編註=松原耕地の別称)を形成し十七家族によって開拓に従事した》(『汎マリリア三十年史』59年、28頁)とあり、市の創設期に立ち合わせた日本移民の一人が松原だ。
 その前後にマニャンエス家もリオから転住し、子息アルキメデスは1930年にサンパウロ州勢に反旗を翻してヴァルガスを擁立した自由同盟(Aliança Liberal)のグループを同地で主導した。32年の護憲革命でもサンパウロ州軍に囲まれるこの地で「獅子身中の虫」の如くヴァルガス側で戦い、本人とも知り合った。
 祐子さんは、松原とヴァルガスが知り合うきっかけをこう説明する。「ヴァルガスが革命で拘束され、釈放された後、こんな会話があった」とし、「ヴァルガスが『どこで働いているのか』と尋ねると、アルキメデスは『松原の農場だ』と答え、『とても懇意にしている。(松原は)いい人物だ』と答えたと聞いている」と述べた。
 関心を抱いたヴァルガスの方から「ぜひ知り合いたい」と言い、アルキメデスはリオのカテテ大統領宮に松原を連れて行った。「ヴァルガスは気に入り、信用に値する人物だと判断し、そこから友人関係が始まった」と祐子さんはいう。
 ヴァルガスは2回、計18年間(今もって最長)も大統領職にあった。その間、逮捕拘束されたという史実はないため、「ヴァルガスが〃革命〃で拘束され、釈放された後、こんな会話があった」という部分には疑問が残る。でもそれ以外の部分は、大統領第1期(1930―45年)でつじつまが合う。
 護憲革命の後、アルキメデスは松原農場で働くようになり、その後、冒頭の会話があったと推測するのが妥当のようだ。そして、彼が大統領一期目の間に松原を紹介した。
   ◎   ◎ 
 『在伯日本人先駆者伝』(パウリスタ新聞社、1955年、203頁)によれば、1892(明治25)年に和歌山県日高郡岩代村出身(現在のみなべ町)の松原は父平八、母イワの長男として生まれた。1912(大正元)年、二十歳で呉海兵団機関兵として入営し、第一次大戦では巡洋艦矢矧(やはぎ)乗組員として日独戦に出征した。南洋、オセアニア方面で活躍し、カロリン群島占領の功によって勳八等桐葉章を授与された。
 渡伯前に軍人だった松原に対し、祐子さんは「日本ではあの時代、みなが同じ階層で、飛びぬけた成功者というのはいなかったんでしょう。学がある人で、海軍で海図を眺めて、日本から遠く離れたブラジルに思いを馳せたみたい」とのイメージを持っている。
 結婚して渡伯したのが1918年、松原が26歳の時のことだ。(田中詩穂記者、深沢正雪記者補足、つづく)

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