ホーム | 日系社会ニュース | アリババの洞窟と化した下院=〃罪悪〃の府に行政改革=大統領の方向転換は困難に=パラグァイ 坂本邦雄

アリババの洞窟と化した下院=〃罪悪〃の府に行政改革=大統領の方向転換は困難に=パラグァイ 坂本邦雄

 オラシオ・カルテス氏が大統領選に立候補を宣言するに当たり、「私の出馬は我が赤党コロラドの行動規範の改正を伴うもので、即ち国政の方向転換を意味するものある」と公言した。
 このカルテス発言は、政界や政府内に臆面もなく定着した公然たる汚職で国家財政をメチャメチャにした、これまでの歴代の政権に厭き厭きした大方の有権者に、正に好感を以って迎えられた。
 しかし、この「方向転換」の公約は一般の善民には大いに歓迎されたが、政府を食い物にし、甘い汁を吸う事に従来慣れて来た赤党コロラドには必ずしも喜ばしい事ではなかった。
 かような相も変らぬ公僕に有るまじき根性の官吏や国会議員は、国の発展を阻止し、且つ民主政体を脅かすものである。
 事実、過去この伝統化した悪弊は全国的に伝播し、その害毒はどの政党出身の者たりとも、殆んどの国家公務員を堕落せしめた。
 そして、これまでの近代何れの政権もその根強い行政弊害に抗し切れず、清廉であるべき筈だった青党の前フランコ政権ですら完全に汚染されて仕舞ったあり様であった。
 では、立法府(国会)はどうかと糺せば、これまた特権を欲しい侭にし、不正行為の頂点に座する始末である。
 期待を欺かれて憤慨した国民は流石に黙っては居れず、近来は盛んに街頭デモに訴える事を覚えた。
 そして、国会の上下両議員は免責

パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

特権を剥奪され、民衆の攻撃に苛(さいな)まされ、その悪行は法廷にまで提訴され出した。
 で、最近は事も有ろうに国会の予算で自宅の多くの使用人を高級で雇い、しかもその上前を撥ねていた不道徳なスキャンダルで追求されたホセ・マリア・イバーニェス下議の例がある。
 旧習に甘んじ、議員の免責特権に胡坐をかいていた同下議ではあるが、今度は「そうは問屋が卸さず」、色々と弁明の詭弁を弄したが釈明がつかず、結局は〃首根っこ〃を押さえられて罪を白状した。
 なお、窮余の一策としてイバーニェス下議は不法に得た大金の戻入・補填を申し出たが、拒絶されて刑事訴訟の裁判沙汰に追い込まれた。
 ところが驚いたことにイバーニェスは厚かましくも自分の窃盗・詐欺行為の言い訳に曰くは、その罪を必ずしも容認した訳ではなく、単に誰にでもあり得る過失として認めたものであると主張した。しかし、「方向転換」の新風潮はこれを許さず受け容れなかった。
 ではイバーニェスは何を為すべきだったのか? それは、真摯に事実を認め、当然の報いを受けるべき事である。
 しかし、「方向転換」に抗するイバーニェスの同僚下議連は下院議会を一つの「アリババの洞窟」に変えて仕舞った。
 所謂、〃罪の無い我と思わぬ者は先ず最初の一石を投じて見よ〃の類で、皆〃ホッカムリ〃するのである。
 これでは「良識の府たるべき国会」は「罪悪の府」と化したも同然である。国民は呆れてこの様な腐敗国会の解散を求めるのも、もっともである。
 イバーニェス下議は計算を誤った。検事局は彼の釈明や主張を呑むほどそう甘くはなかった。惰眠の世間は今では変わろうとしているのである。
 国会(この場合は下議院)は罪を告白した泥棒が出て行くように大きく戸を開けなければならない。国会は「アリババの洞窟」ではないのである。
 このままにして〃泥棒〃を養い続ければ、カルテス大統領が宣言した「国政の方向転換」は望めず、国は何時になっても発展はせず、明るい未来は閉ざされてしまう。心ある政治家は憂国の精神を以って断然と国運の隆盛に当って貰いたい。国家はこれに対し、永久に感謝の念を忘れないであろう。

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