メキシコが生んだ南米最大級のコメディアン、ロベルト・ボラーニョスが11月28日にメキシコのカンクンにある自宅で心臓疾患により死去した。彼の死去の報道は中南米の国で軒並みトップ扱いだったが、ブラジルでの人気は近年になっても圧倒的で、彼の番組「シャヴェス」をブラジルの番組だと思っていた人も少なくない。
ボラーニョスが自ら企画し主演した番組「シャヴェス」は、1971年に本国メキシコで放送され、中南米で大ヒットした。ブラジルでは1984年、当時まだ新興局だったSBT局で、バラエティ番組「TVパウ」の中の1作としてはじまった。
「シャヴェス」は、当時既に50代後半だったボラーニョスが8歳の孤児シャヴェスを演じ、友人のシキーニャやキコ、乱暴な大人のドン・ラモンなどを中心に繰り広げるコメディで、子供目線で大人社会を風刺することで人気を集めた。そんなボラーニョスは「メキシコのチャップリン」などとも呼ばれた。
その画質の悪さ故に、「昔の作品」であることは歴然(初回作品は1971年作)で、大人たちが子供役を演じる姿で強い印象を残した「シャヴェス」には、ブラジルでも熱心なファンが生まれ、1984年に国内で放映されてからは、たえずSBTに番組の継続を望む声が続いた。そうしたこともあり、SBTで「シャヴェス」は定番番組となり、それは、今現在、全国視聴率で2位の局に成長したSBTを象徴する番組にもなっている。奇しくもSBTがボラーニョスの容体悪化から訃報までの緊急ニュースを報じたのは、「シャヴェス」の再放送を流していた最中だった。
こうしたこともあり、「シャヴェス」はブラジルでは世代を超えて人気があった。2006年からは子供向けにアニメ版も開始され、現在も放送中だ。また「シャヴェス」は若者のあいだで、動画やいたずら画像に使われることも頻繁で、12年に大ヒットしたノヴェーラ「アヴェニーダ・ブラジル」で流行った衝撃のシーンの画面演出を「シャヴェス」の笑い話の中でかけあわせた動画が流行。14年の大統領選の際の風刺画像でも「シャヴェス」のキャラクターが頻繁に使われていた。
また、ブラジル・サッカー界にもファンが少なくなかった。ネイマールは仮装衣装でキコのセーラー服を着たほどのファンで、今回のボラーニョスの死に際しても「永遠の伝説、ロベルト・ボラーニョスはずっとシャヴェスのままだ。ありがとう」とツィッターで弔辞を送った。また、セレソンのフォワード、ジエゴ・タルデッリもツィッターでシャヴェスの写真に自身の所属するアトレチコ・ミネイロのユニフォームを合成加工して着せ、弔辞を語った。この他、ロナウジーニョ、ダヴィド・ルイスなどが弔辞を発表している。
また、ボラーニョスの母国、メキシコでもやはり彼の死への反応は大きなものだ。ボラーニョスが大ファンだったサッカー・チーム、クラブ・アメリカは11月29日、アズテカ・スタジアムでの試合のハーフタイムに電光掲示板で追悼を表した。練習中には、ボラーニョスの愛称の「チェスピリート」と、「シャヴェス」のスペイン語原題である「エル・チャボ・デル・オチョ(8番街のエル・チャボ)」にかけた背番号8の特別ユニフォームを着て練習する選手の姿も見られた。
ボラーニョスの葬儀は翌30日に同じくアズテカ・スタジアムで行なわれ、4万人の大観衆がつめかけた。その中には、彼のもうひとつの人気番組でさえないヒーロー「シャポリン」でおなじみの、胸に「CH」と書いた赤い全身タイツを着た熱心なファンの姿が数多く見られた。(11月29日付フォーリャ紙、エスタード紙などより)
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