樹海

 11日、フランスはパリで世界でも稀な光景が見られた。イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長がフランスやドイツの首脳らと共に腕を組んで行進する姿が報じられたのだ▼この行進は7日と9日に起きた新聞社襲撃やテロリストによる人質占拠事件の犠牲者17人の追悼と、「表現の自由」「テロ反対」を訴えるもので、50以上の国や地域の首脳を含む、120万~160万の人々が集った。全仏では370万人が参加したとされる抗議行動を最初に呼びかけたのは左翼政党で、デモそのものは政党や宗教、国籍も超えた大きなうねりとなった▼報道によると、7日の新聞社襲撃事件で容疑者に路上で止めを刺された警官のアフメド・メラベさんや、9日に人質4人が殺されたユダヤ系食材スーパーで客を助けた店員もイスラム教徒だった。新聞社襲撃後はイスラム教の施設を狙った暴力行為も多発しているが、今回の抗議行動には「私はアフメド」というスローガンを掲げてテロ反対を唱えるイスラム教徒の姿も見られ、過激主義とイスラム教を混同しないよう求める声も出た▼同日の抗議行動には、国が二分されているウクライナからの参加者も多かったし、ブラジルやチリ、ウルグアイ、コロンビアなど、軍政下で「言論の自由」や「表現の自由」の価値を再確認した南米諸国からの参加者もいた▼一部の急進派や過激派がその宗教や政党全体を代表する訳ではないと知っていても、ステレオタイプにとらわれて判断する事は多い。移民社会ならなおの事、互いの立場や主張、文化の違いを認め、相手を尊重する姿勢を持たなければ、真の共生、共存は無理なのだが。(み)

image_print