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発電所建設の借款は不必要?=イグアス・ダム機械化の謎=意見真っ二つに分かれる=坂本邦雄

 パラグァイは豊富なクリーンエネルギーを誇れる有数の電力生産国である。中国の三峡ダム(許可出力2250万KW)に次いで世界第2位の伯国との双国イタイプー水力発電所(最大出力1400万KW)、および、これも世界第7位と言われる亜国との双国ヤシレタ水力発電所(最大出力320万KW)、それぞれの生産電力を各協定で、その半分は自由に使える恵まれた国である。

双国イタイプー水力発電所(Foto: Itaipu Binacional)。その近くにある「イグアス・ダム機械化プロジェクト」が問題になっている

双国イタイプー水力発電所(Foto: Itaipu Binacional)。その近くにある「イグアス・ダム機械化プロジェクト」が問題になっている


 現在その豊富な電力は未だ国内産業の需要に余って全部は使い切れず、余剰分はおのおの伯国と亜國の言うなりの市場価格以下の安値で買い取られているだけの事である。
 最近パラグァイではようやく産業開発の機運が、これまでになく盛り上がりつつあり、外国企業の進出が目白押しの感じだが、それでもイタイプーやヤシレタ両発電所のパラグァイに属する生産電力の全部を利用し切るには、いまだ間がある事だと思われる。
 その様な事情のところ、日本政府の円借款によるイグアス・ダム機械化プロジェクト(出力103MWのカプラン水車2基装備)用資金が、その近くに既存する純国営アカライ水力発電所(最大出力210MW)の電力生産能力増補のために9年ほど前に貸し付けられた事は、先に本紙でも報じた。

電気余りでなぜ発電所?

 普通の常識だったら、電力が有り余っているのに、なぜまた新発電所の建設かと疑問に思うのだが、条約では(伯)イタイプー及び(亜)ヤシレタの各余剰電力は第三者には売電できないので、ウルグァイやチリ等の希望国に純国産電力を売る政府の政略的な意図があっての事かも知れない。
 ところが、ここでまた送電経由国になるアルゼンチンは、わが電力の輸出に色々と難癖を付けて邪魔をするのである。
 これら諸般の事情は別として、アスンシォン市のABC紙(12月28日付)は、ANDE(電力公社技術班)の意見を参考にして、今までに行われた当該入札プロセスから判断すると、イグアス・ダム機械化プロジェクトで、運用上かつ環境上の問題以外にANDEは、およそ1億2200万ドルの自己資金の食い込みを喫する結果になり、国益に背く事業だと非難した。

地元紙が国益に背くと非難

 そして、同プロジェクトのコスト内訳は次の通りだとした。即ち、
※プロジェクト策定・管理/日本工営㈱。2500万ドル。
※ロット①付帯工事、23KW配電線・接続。350万ドル(施工済み)
※ロット②土木及び水力機械化工事。2億5270万5195ドル(サプライ価格)。
※ロット③タービン調達/据付(東芝・三井が受注済み)。7600万ドル。
◆ロット④イタキリ23KW送電線/到達位置の工事。3000万ドル。
※ロット⑤変電所及び220KWの送電線建設。
 以上総予想コスト、3億8720万5195ドルに対し、日本のJIBC/JICAの円借款(2006年に契約)は約2億ドル相当で、それにANDEのカウンターパート資金6500万ドルを含めると総額は2億6500万ドルに達し、パラグァイ側が補填しなければならない赤字は、約1億2220万5195ドルになると云う訳である。
 過去入札プロセスにおいて、その様に幾多の告発をされた技術的問題や色んな疑惑が存在するに拘わらず、ANDE当局は全てのロジック(条理)に反して、本プロジェクトを執拗に推進しようとしているのである。

工事遅延で膨らむコスト

 このところ7?8年間にイグアス・ダム機械化プロジェクトのコストは82%も増大した。そして、それが完成の暁には更に幾らに膨れ上がるかも分かったものではないのである。このコスト倍増はANDE当局も認める問題なのだが、その原因は決して解明される事はなかった。
 これに関し、ANDE技術班の一員エルネスト・サマニエゴ技師はダムの運用上や環境上の問題とは別に、アカライ水力発電所の能力効率化の為のイグアス・ダム水力の活用は、その貯水量調節に欠点があるので予想通りの効果は得られないと云う意見である。
 そして、同計画は不合理な事が実証的に確認されている。よって、折角の資金はもっと優先順位の高い国益に資する事業に使われるべきであると指摘した。
 なお、本プロジェクトの事業化調査をチェックするだけでも分かる様に、イグアス・ダム機械化による発電コストの単価は、他の内外同種発電所のそれに比べて大変高く付き、理屈に合わないと述べた。

公社技師も「矛盾」と批判

 同じく、ANDEのアクセル・ベニテス技師は同公社では本計画のイグアス水力発電所の将来7年間に於ける200GWhの予想生産電力の事ばかりを考えているが、一方でパラグァイがイタイプー及びヤシレタ両国際水力発電所の自国分電力からブラジルとアルゼンチンに対し、2013年度だけでも合計47・188GWhもの大量の電力を譲渡している事態は気に掛けないでいるのは――常に何らかの営業上の言い訳はあるだろうが――矛盾する問題だと批判した。
 現在の状況としては、ANDE(電力公社)の価格評価委員会の報告資料は、全てJBIC/JICAの手許に提出済みで、ロット②の土木及び水力機械化工事に関する「イグアス建設コンソーシャム」・「Camargo Correa SA y Talavera &Ortellado SA」が提出した唯一のサプライ価格2億5270万5195ドル(付加価値税込み)の承認、または拒否の決定いかんに懸かっている。この金額はANDEの当該準備資金の枠を遥かに超えるものである。
 参考までに付言すれば、本件プロジェクト本来の予算2億6500万ドルの内で、これまでの実施金額(実績)は1億0450万ドルである。

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