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終戦70周年=〃台風の目〃吉川順治の横顔=身内から見た臣聯理事長=(2)=文武両道のインテリ陸士

軍服姿の吉川順治中佐(『Corações Sujos』Fernando Morais、2000年、カンパニア・ダス・レストラス社、68頁)

軍服姿の吉川順治中佐(『Corações Sujos』Fernando Morais、2000年、カンパニア・ダス・レストラス社、68頁)

 早田(そうだ)さんは「日露戦争に騎兵として従軍し、コサック兵と切りあって負傷した。その功績から金鵄勲章をもらったと聞いています」と振り返る。開戦時、吉川は27歳。金鵄勲章は軍人軍属のみが受勲できる。
 『百年の水流』(外山脩、12年、283頁)には、詳しくその話が書かれている。
 《尉官時代に出征。戦場で斥候長をつとめていたある日、部下を休ませて一人馬で行くと、敵の騎兵五人を発見した。
 「よし彼らを片付けて、馬を分捕ってやろう」と、ただ一騎、突撃した。が、横から新手の敵騎兵が十騎ほど現れ、白兵戦になった。三、四人を斬ったが、多勢に無勢で、頭に負傷、血が顔に流れてくるので、止むなく退却した。頭部には大きな刀傷の痕が残った》とある。
 日露戦争のすぐ後の30歳前後で、吉川は早田さんの母雪江の姉と結婚したようだ。
   ☆   ☆   
 一方、早田さんの父・耕捌(こうはち)は1886年生まれで、吉川の九つ年下の弟分だ。吉川は耕捌と東京で知り合って意気投合し、妻の妹を紹介したのかもしれない。1914年に早田さんの両親は結婚している。
 早田さんは、父の紹介として「佐賀県出身で早稲田大学卒業後、米国のカリフォルニア大学に2年間留学し、福岡の『九州日報』(西日本新聞の前身の一つ)に就職して記者をしていた」と説明した。けっして誇らしげでなく、むしろ「少し呆れた」という感じの、不思議なニュアンスでその立派な経歴を語った。
 早田さんは1920年生まれ。12歳の時、家族7人で32年に渡伯し、バストス移住地に入植した。その時、母親筋の縁から吉川の長男・吉郎が早田家の構成家族として共に渡伯していた。早田さんは「吉郎さんは20歳過ぎだった」と記憶する。
 「父に倣って軍人になろうとしたが、吉郎さんは目が悪くて試験が通らず、『それなら』とブラジル行きを〃志願〃したようです」と早田さん。
 山内健次郎手記『世界大戦の余波』(1976年、以下『山内手記』)には1946年のアンシェッタ島抑留時点で、吉郎36歳とある。逆算すると、「1910年頃生まれ」であり、早田さんに確認すると「私より10歳ぐらい年上」なので、32年時点で22歳となり、辻褄が合う。
 吉川は東京時代に宝生流の謡を習っている。『伯謡会の回顧』(鈴木威、84年、16頁)には、《騎兵中佐吉川順治氏(中略)は東京在住中、桐谷正治(きりたに・まさはる)氏の門下であったと云う》と書かれている。
 『新撰 芸能人物事典』(日外アソシエーツ、2010年刊)によれば、桐谷正治は能楽師(宝生流シテ方)として知られ、兵庫県神戸出身で、《16代目宝生九郎に師事。宝生流地謡方・桐谷鉞次郎の跡を継ぎ、地謡方専門で名調をもって知られた》とある。
 今でも『芸能人物事典』に掲載されているような有名人に謡を習い、早田耕捌のようなインテリと付き合いが深かったということから、東京時代の吉川はただの頭の固い軍人ではなく、文化的素養も深い文武両道の人物だったことが伺える。(つづく、一部敬称略、深沢正雪記者)

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