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寄稿=パラグァイ=タバコ密輸防止に努めるブラジル=カルテス大統領の会社も関係?=坂本邦雄

パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Jose Cruz/Agencia Brasil)

パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Jose Cruz/Agencia Brasil)

 パラグァイからのタバコの密輸に手を焼くブラジルは官民機関が揃ってその対策達成に躍起になっている事は既報の通りで、今や国家的な重大問題として注目されている。ブラジルが悩む密輸タバコの大部分を占めるのは隣国パラグァイのTABESA・タバコ会社で、その社主は、オラシオ・カルテス大統領なのは良く知られている。そして、カルテス大統領は去る12日(木)、ブラジル市場での密輸タバコ関連問題の調査報道を行っているフォーリャ・デ・サンパウロ紙の単独インタビューに快く応じた。

 先ずカルテス氏はパラグァイ産タバコに係わる一連のかまびすしいニュース報道は「多国籍企業の利害問題」の都合によったものだと云う意見である。
 「もし流布する色んな噂が真実なのであれば、私は本当に心配に耐えないであろう。しかし、私はそうでない事を絶対に疑わないのである」と云う。
 なお、「この問題はすべからく徹底的に調査すべきで、一方、そのような報道の動機や利害的理由がどこかに必ず存在する事を見逃してはいけない」と、カルテス氏は記者の取材に答えた。
 なお、フォーリャ紙の「処罰されない犯罪」と題するWebサイトの調査リポートではビデオ映像、航空写真、闇物資の〃運び屋〃との取材記事、及びパラグァイからブラジルの広範な地点に至る密輸ルートの地図が紹介された。
 このリポートによれば、ブラジルで消費されるタバコ3本に1本は密輸タバコが占めており、その大多数は陸路と水路経由でブラジル市場へ導入されるパラグァイ産のタバコだと云う。
 パラグァイのアルトパラナ県とカニンデジュ県はブラジルのパラナ州フォス・ド・イグアス市及び南マットグロッソ州ムンド・ノーボ市に夫々何千キロメートルもの大河パラナ並びに陸地境界線を国境とし、コントラバンドに大変有利な立地条件下にある。
 ブラジル当局は最近過去2年間に密輸の廉で3317人に及ぶ犯罪者を検挙し投獄したが、これでマフィア勢力が微動たりともするものではなく、依然としてパラグァイ及びブラジルに於けるその犯罪組織は健全に機能し続けている。
 なお、フォーリャ紙はパラグァイからの集中密輸によりブラジル国内産業は著しい被害を被っており、2014年度だけでも工業界の受けた損害は650億レアル(936億ガラニ相当)に及んだと報じている。
 同じく、フォーリャ紙のデータに基く「IESF・国境地帯経済社会情勢研究所」の調査でも2014年度のパラグァイ産タバコの密輸がブラジル国庫に対し犯した脱税の被害は45億レアルに達したと指摘している。

泰然自若としたカルテス氏

 このフォーリャ紙とのインタビューで、なぜカルテス氏のタバコ会社のブランド製品が主にブラジルで押収されているのかの質問に対し、大統領は「全てそれ等の情報の裏には第三者の利害問題が絡んでいるだけの話しで、気にする事でもないので心配していない」と至って冷静である。
 さらに「このテーマに関し、先にメキシコとコロンビアのマスコミが騒いだ問題は既に幾度も〃焼き直し〃された取るに足らないもので、背景には多国籍企業の策謀があったまでの事である」と語った。
 次いで「自分の会社に係わる、いかなる司法又は税務告訴などのトラブルは一切なく、誹謗はマスメディアが取り沙汰する範囲の流言に過ぎない」と付言した。
 なお、パラグァイ政府の対違法経済活動の合法化政策について大統領は、パラグァイとブラジルに極めて重大な経済的被害を及ぼしている国境地帯の密輸貿易を厳重に取締る決意を改めて強調した。

密輸対策合同センター

 ブラジルのジョセ・エドゥワルド・カルドーゾ司法大臣は、ブラジル、アルゼンチン、パラグァイ三国間の国境地帯に於ける「密輸対策合同センター」の設置案をこの度提案したと、19日付のEfe電は伝えた。
 そして、フォーリャ・デ・サンパウロ紙の主催で行われた「密輸問題対策セミナー」では同センター運営の〃指揮統制〃はブラジルとアルゼンチンの費用負担を以って遂行する事が合議された。
 なぜならば、カルドーゾ法相は、ブラジル―パラグァイ(巴)間のパラナ河上に架かる「友情の橋」を渡る車両を一台一台チェックするのはとても不可能な話で、だから効率的なコントラバンド(密輸)の取締りは警察隊や諜報機関の機能、それにテクノロジーの駆使に依存する以外に効果的な結果は得られないからだと語った。
 この意味において、カルドーゾ法相はパラグァイ及びアルゼンチンとの国境を共有するブラジルはこの三国間国境地帯のモニタリングを強化する為にドローン(無人機)の更なる有効的な活用方を力説した。
 ちなみに、ブラジルはすでに2011年来、国境地帯における、特に麻薬密輸の監視取締りにイスラエルから導入した無人機を使用している。

マウロ・ヴィエイラ外相の初訪問

 第2期ジウマ政権のマウロ・ヴィエイラ新外務大臣が12日夜、初の公式訪問で来パした。
 美辞麗句の約束に終わらず、確実な解決や履行を要する両国間の重要なペンディング事項は山積する。
 たとえば、昨年11月20日付ニッケイ新聞の記事「不穏な国境地帯のゲリラ」で触れた、最近連邦警察に逮捕された、パ国カニンデジュ県ウペフー前市長のヴィルマル・アコスタのブラジル連邦裁判所当局に依る早期身柄引き渡しも問題の一つだ。
 アスンシオン市のABC紙の通信員パブロ・メディーナと助手のアントニア・アルマダ嬢の殺害知能犯容疑で、伯?巴二重国籍を利用し、ブラジルの南マットグロッソ州に潜伏逃亡していた。
 このヴィルマルはブラジル人国籍所有者のため、ブラジルは国外追放が出来ないので、手続きが面倒な〃身柄引き渡し〃によるしかない。
 加えて、ブラジル当局が国境地帯での個人買い物金額(国境貿易)の上限を、一人当たり300ドルから150ドルに下げた決定の再考慮(パラグァイ側はむしろ500ドルに上げて貰いたい)の要請などがある。
 この点、我がエラディオ・ロイサガ外相は、メルコスールの規定では「国境貿易」に当る観光買物額(クーポ)の金額は加盟国間で適宜に改定できるので交渉の余地はあると語った。
 なお、「国境貿易」に関連して深刻な問題は近来のレアルの切り下げである。例えば、サルト・デル・グアイラ市だけでも、一日の取引で100万ドル強の為替損害が記録されている。
 その他、まだ多々ある懸案事項の中で正に重要なのは、すでに今ではパンク状態にある現在のフォス市とエステ市を結ぶパラナ河上の「友情の橋」に次ぐ、同じくフォス市とパラグァイ側のプレシデンテ・フランコ市を繋ぐ第2国際大橋の架橋プロジェクト工事の可及的早期実施の件である。
 この第2国際大橋はもう随分古い計画の事業だが巴?伯間の色んな政財問題で幾度も延期されて来たプロジェクトである。
 架橋資金は全てブラジル側の出資に依るもので、総額1億ドル以上は掛かる予想である。
 マウロ・ヴィエイラ外相は13日(金)午前8時にブルビシャ・ローガ官邸でオラシオ・カルテス大統領と謁見し、9時には外務省でエラディオ・ロイサガ外務大臣との会談に臨んだ。
 引き続き、ロイサガ外相主催の公式昼食会に出席した後、ヴィエイラ外相は帰国の途に就いた。

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