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第25回 日本企業のブラジル撤退はブラジルのせいか? ③

不況に突入するブラジル経済に殴り込みをかけるように、昨年8月に工場開設した中国のチェリー自動車(Foto: CheryBrasil/SDPress)

不況に突入するブラジル経済に殴り込みをかけるように、昨年8月に工場開設した中国のチェリー自動車(Foto: CheryBrasil/SDPress)

 日本企業のブラジル撤退の原因としてこれまで、①進出前の調査不足、戦略面も含めたフィージビリティスタディの欠如、②グローバル化に対応していない人事制度を前二回で挙げた。まるで、自分が背負えるだけの食糧などをカバンに入れ、現地のガイドを雇わず、GPSと地図とガイド本だけでアマゾンの奥地へ分け入り、熱帯雨林に体も気持ちも慣れて、目的地の4分の1ぐらいに来た時に帰る時期となり、折り返しているのに等しい。
 次の人もまた一からスタートで同様のことをするので、いつまで経っても目的地にたどり着かず、遠く地球の反対側の本社ビルにいる役員も何が起きているのか気づかない。やっぱりアマゾンは難しいなあと言っているとかいないとか。
 欧米企業はとっくに奥地に研究所を建てて、新種の植物から薬品を開発するとともに、化粧品や食品も開発して大もうけをしているにもかかわらず、である。年に1回は本社役員もアマゾン川クルーズには来ても、ワニや蛇を恐れずに奥地へ分け入ったりはしないため、アマゾンの奥地で何が起こっているのかはなかなか本社には伝わらないことになる。
 ブラジル撤退の最後の原因は、以上述べてきたように本社トップのブラジルに対する無理解、無関心、軽視等である。ブラジルの物価の高さをいくらレポートしても信じない本社の経理部。ブラジルの税制の複雑さと罰金の高さを説明しても、現地任せにしてしまう経営企画部。輸入関税の高さから、末端価格がFOBの5倍、10倍の高さになっているのにロジスティクスや取引先も会社の慣例を押し付けてくる本社海外部。体を張って家族で赴任をしているのに、会社規定だけを盾にセキュリティにも学費負担にも配慮がない総務部。
 今後海外で稼がざるを得ないはずの日本企業は、外国に住む社員のモチベーションを上げなければ生き残れないはずなのに、ブラジルに限らず、これらが従来の慣例を簡単に変えられない、グローバル化できない日本企業の現実だろう。
 ブラジルを含む、特に政治・経済的に安定をしていない特殊な環境を持つ大国に進出をする際のグローバル企業には、必勝の方程式がある。それは、現地を良く知る外部の専門家も含めて、両国のトップクラスの智恵を結集した勝てるチームを作ることだ。
 よく本社の海外部や経営企画部が他国での成功パターンを押し付けてくるが、それもまた見当違いである。成功パターンとは、どこの国にも通用するものではなく、各国特殊事情が違うため、国ごとにカスタマイズをしなければならないものである。
 例えば飲食店は、中国では自社チェーンの多店舗展開で成功しても、ブラジルではフランチャイズでなければ短期間で多店舗展開はできない。アジアでは独自で工場進出をしても、ブラジルでは同業企業の買収をした方が成功確率が高くなるケースも多い。
 要するに、ブラジルで成功をするためには、まず予算をかけてしっかりと調査をし、それに基づいてトップクラスの智恵を集結して戦略を画き、グローバルな人事に基づいたモチベーションが高い駐在員がチームのトップとなって成功するまで踏ん張ることが大切である。そのために、本社がしっかりとブラジルを理解することが前提となる。日本企業のブラジル撤退は、すべてこの反対をした結果と言える。(終わり)

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。
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