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第33回 ギャンブルのような市場で勝ち抜くには?

「ブラジルの秋葉原」ともいわれるサンパウロ市セントロのサンタ・イフィジェニア街の電気街の様子(Foto: Fotos Publicas)

「ブラジルの秋葉原」ともいわれるサンパウロ市セントロのサンタ・イフィジェニア街の電気街の様子(Foto: Fotos Publicas)

 出張中に愛用のMacの電源アダプターが壊れて、とても困った。やはり、純正を買うべきだったか…。ブラジルにお住まいの方は良くお分かりだと思うが、ブラジルのアップル製品は異常に高い。だいたい日本の2倍から3倍である。
 電源アダプターもしかり。日本からブラジルへの移動途中にどこかで失くしたので、ブラジルに着いてからアップルの正規品を扱う店に行き、金額を聞いたら、なんと500レアル=約2万円である。他に何店舗か回ったり、ネットで探したりしてみたが、やはり同じぐらいの金額だ。日本のアマゾンでは、純正が3千~5千円で売っていて、本体すら日本では7万円台で買っているので、その4分の1以上と言われ、二の足を踏んだ。
 返す踵で、その近くにあるビルの1ー2階で中国人たちがちいさな軒を連ねてやっている、通称「シンギリンギストア」に行ってみた。そこで、電源アダプターの価格を聞いたら、非純正の互換品が150レアル=6千円。日本の純正よりも高いが、ブラジルの純正の半分以下である。3カ月の保証が付くとのことだったので、もし粗悪品ならばその間にわかるだろうと思い、価格に負けて、見た目はそっくりなシンギリンギを買ったが、見事に3カ月目に壊れた。
 今回の出張の航空券もネットのエアラインサイトで購入したが、いつもギリギリに日程が決まり、サンパウロ~リオが片道400~500レアル=1万6千~2万円と高い買い物をしているので、今回は早めにと思い、10日前の夜中にネットを見ていたら片道79レアル=3160円。目を疑ったが間違いない。夜行バスより安い。これはと思い、翌日急いで関係者とスケジュール調整をして、その夜に買おうと思ってサイトにアクセスしてビックリ。何度やっても昨日の価格が出てこない。200レアル=8千超えている。わずか、20時間ぐらいの間に倍以上に。ひょっとしたら、また明日は安くなるか、夜中ならと更に2日かけた結果、結局350レアル=約1万4千円で、自分の気持ちと手打ちした。
 その後、多少でも後悔を減らすために、最後はいくらぐらいになるかを見ていたら、900レアル=約3万6千円まで上がり、多少溜飲を下げた。サンパウローリオは東京―大阪ぐらいだが、日曜日のいい時間帯は、ブラジルの航空券は、最大1500レアル=6万円ぐらいまで上がる。まるで、株や為替をやっているみたいだ。ミネラルウォーターなども、どこで買うかによって5倍ぐらいの差が開く。
 要するにブラジルでビジネスをするということは、やり方次第ですごく儲かるし、損もするということだ。他の選択肢をたくさん用意しながら、選択肢をうまく限定していけば、高くても買うお客さんはたくさんいる。そこの仕組みをうまく作れるかどうかに成否がかかっている。このようなギャンブルのように変化の激しいブラジル市場で、何でも本社の決裁を取らないと動けないようだと、ジョーカーばかり引くことになる。

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。
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