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祭り=グァタパラ 林良雄

 普段は静寂の移住地。これが破れ喧騒に変わる日が年に数度あり、その最大が村祭りである。移住地の入植と1年の農作物のめぐみを祝う入植並びに収穫祭、さらに運動会と年初めの新年会を、毎年村をあげて催している。
 今年もその村祭りの季節がおとずれた。祭りの幕開けに、先人を祀る拓魂碑の前で慰霊祭が執り行われる。53年を迎えた移住地だが、50年祭までの物故者を188名と数えた。移住地も少子高齢化を迎えており、毎年10人前後の黄泉迎えに至っておる。久し振りに入植当時の知人たちが祭りに訪れ、物故者の墓前に線香を供えてくれたが、ブラジル製の線香一束では不足をきたしたのではないかと案ずる。

今年のグァタパラ入植祭では外交120周年を祝し、市役所から贈られた記念プレートもお披露目された。

今年のグァタパラ入植祭では外交120周年を祝し、市役所から贈られた記念プレートもお披露目された。

 祭りの初日は移住地関係の来賓者を迎えての式典。収穫祭の祝いでもあるので、農産物、手芸、日本語学校児童作品等も展示する。1980年代後半から移住地の営農形態が変り、蔬菜、雑穀栽培が急激に姿を消してしまった。収穫祭とうたいながら、農作物の展示がなくてはと、苦肉の策として編み出されたのが一坪菜園である。
 移住者に日系人が好む野菜種子の希望を回覧で取りまとめ、種子と堆肥を無料配布する。そしてこの祭りに、多くの高齢者が昔取った杵柄で手掛けたものを出品して頂くのだ。優良な出品物に順位を付け記念品を、その他は参加賞を贈呈する。
これらの品々を無料で寄付して頂き、2日目の午後2時で展示終了するとともに激安特価で来賓者に即売しているが、これが毎年大好評である。
 近年は出品総数420点が常であったが、少子少高齢化に伴い、蔬菜や児童作品などに影響が現れ、数年前展示責任を担当した時よりも3割減と思われた。
 昼食会では、年齢とともに容姿が変わりお互い最初は認識できなかったが、三十数年振りに師弟の邂逅であったとある来賓者から聞き、これだけでも訪れた甲斐があったと喜んで頂いた。また近年の交信、メール友達との出合いなどの話も伝わって来た。これこそ開催者冥利に尽きる。
 私も53年振りに同船者、入植初期の隣3軒の幼友達、数年振りの小学校同級生等との再会を喜んだ。隣の芝の色が気になって移転された人達が気持にゆとりが出来たのか、昔飲んだ移住地の水の味がなつかしいのか、数人の移転者で同年代の方々から挨拶された。
 展示物を準備する同年の村人たちの掛けている言葉に耳を欹てると、誰それのお婆ちゃん、どこそこのお爺さんと呼び合っている声が耳朶にとらえ、53年の長い歳月を感じさせて頂いたのであった。

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