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第43回 日本人が信じられないブラジルの不都合な真実 ③

 ブラジルには、日本人にはなかなか信じられないこと、日本や他の国では起きないし、理屈では納得できないことが多々ある。
 商品サンプルを送っても通関で止められて、高い関税を払わされて大変なこと。そして、ちゃんと輸出をして販売しようとすると、何重にも税金がかかり、販売網づくりを間違うと、あっと言う間に日本で売っている価格の3倍~10倍になってしまい、まったく売れなくなってしまうことを前2回で書いた。
 そうなると、自社で売るしかない! ということになり、会社を設立して営業社員をたくさん雇って売ろうと考える。当然の流れだろう。しかし、ここでまた、第三の信じられない真実が立ちはだかる。
 まず、ブラジルで社員を雇うためには会社を設立しなければならないが、ブラジルで法人を立ち上げるには、最低1人のブラジルの居住権を持った人が、経営者として株主に入る必要がある。そして、外資企業の場合、最低で60万レアル=約2千万円(現在レアル安なのでこの額だが、少し前までは3千万円だった)を資本金として投資しなければならない。
 そうしなければ、日本人が経営者として赴任をするための経営者ビザ=永住ビザが取れない。もう一人となるとさらに60万レアルが必要だ。日本は、変わってなければ500万円であった。中国は10万米ドル、タイも約1千万円前後である。あまりにハードルが高いといえよう。
 60万レアル以上の資本金を入れて、会社を設立できたとして、次は社員採用である。ここでまた、強烈な真実に出くわす。ブラジルの労働法は、1940年代のイタリアの労働法をもとに作られていると言われており、徹底的に労働者保護に立った法律となっている。労働者は、入社した会社で1年働くと、1カ月の有給休暇を取る権利が与えられ、法律に守られているのでほぼ100%消化される。会社側はさらに、有給休暇を与えるだけではなく、業績に関係なく1カ月分のボーナスも払わなければならない。
 さらに社会保険や労働保険、積み立て基金や税金などを含めて計算すると、労働者に払う金額の約2倍の人件費がかかる。要するに、日本での人件費の半分で雇えたと思っても、結局同じぐらい払うことになるのだ。ホワイトカラーの中間管理職以上にいたっては、日本より給与が高かったりするので、とんでもない金額になってしまう。
 それにも関わらず、もし業績が上がらなかった場合や、明らかにやる気がないのがわかった場合でも、簡単に辞めさせられない。辞めさせる時は裁判を覚悟しなければならない。労働裁判所があるブラジルでは、どんなに経営者側に非がなかったとしても、裁判になるとほぼ90%以上は労働者が勝つことになる。後には高額な弁護士費用と賠償金の支払いが待っている。
 ここで最初の話に戻るが、自社で販売をしていこうと思って、営業をたくさん抱えるということは、高い人件費と労働裁判リスクを背負って事業展開をするということになる。市場に商品を投入して、認知されて、販売実績が上がるまでに、当然3年~5年はかかる。中小・中堅企業では、人海戦術で営業しようと思っても、この労働コストで3年はとても耐えられないだろう。3年で資本金を食い潰して撤退となった時に、簡単には撤退できず、さらにコストがかかるという不都合な真実が…。(つづく)(輿石信男・株式会社クォンタム代表取締役、ニッケイ新聞東京支社長)

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。
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