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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(54)

現在のアサイ市の入り口

現在のアサイ市の入り口

区会、青年団

 大人は時々、寄合いをした。それは熱気に溢れていた。やはり資料類に掲載された「開拓期を語る座談会」の記事の中に、その様子が語られている。こんな風に──。
【後藤】「その頃の区会は実に真剣だった。さながら帝国議会そのものだった。『区長! 異議あります』片岡さんが手をあげて堂々と意見を述べる。岩戸茂吉さんが起立する。オヤジつまらんことを言わなきゃいいのにと思っていると『区長、行政方針を発表しなさい』(笑い)」
【吉田】「青年団をつくってその発会式を、新年宴会をかねてやった。その時、古賀さんと志津さんが喧嘩やった。古賀さんがピンガのガラフォンを投げ、志津さんが気を失った。
【丹野】「すぐ水をかけて蘇生させた。その件で金松が会長を辞めた。
【吉田】「原因は新年会の順序がなっていない、と古賀さんが言い出して……。酒が入っているから皆、勇ましかった」
 右にピンガの話が出ているが、開拓の仕事は苛酷で、特に男の場合、これがあったから堪えられた。ピンガで苦しさを和らげて働いた。朝早くから夜遅くまで重労働をし、家に帰ってドラムかんの風呂に入り、食事をしながらピンガを呑んだ。後は白河夜船だった。

森の動物たち

 森には種々の動物がいた。野豚、鹿、アンタ(獏)は、捕えて食糧にした。野豚は道にノコノコ出てきた。それを見つけた某が、自分の仕事を放り出して、街の肉屋まで追い立てて行った。しばらくすると、肉片が店先に並んだ。
 以下は、いずれも(資料類に記されている)入植者の体験談である。
 森の中の道を歩いていると、タマンドア(ありくい)が二匹居て立ち上がった。人間より背が高く、ビックリした。
 オンサ(豹)が森の中で吠えた。その声が恐ろしかった。ある時、ブラジル人と歩いていると、前方にオンサがいて、道の真ん中に寝そべっていた。じっとして動かない。ピストルで撃とうとしたら、そのブラジル人が「撃つな、うち損なったら大変なことになる」と止めた。そこで、オンサが退(ど)くのを待った。その内、別のブラジル人が馬でやってきた。馬が止まって嘶いて動かなくなった。オンサは悠々と道の真ん中に寝そべっている。その内、やっと立ち上がって森の中へ入って行った。
 毒蛇もいた。カスカベルは、カフェーの苗を植えるために掘ったコーバ(穴)の中に、よくいた。それを一度に十数匹殺した。
 ハンモックを吊って子供を寝かせておいたら、その下にカスカベルがやってきて寝ていた。
 水汲みに行った時、ウルツーが立って、のどをふくらましながら襲ってきた。
 危険といえば──動物の話ではないが──セッカ期は、山に火が入って、家のそばまで焼けてくることがあった。マレッタで、どの家も患者が出た区もあった。
 滑稽なのは、森の中に大便をしに入って、迷ってしまい、出られなくなり、ようやく家に戻ったのは翌日だった、という話である。それほど森は深かった。

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