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小噺(ピアーダ)万歳のブラジル=サンパウロ 飛田呆介

 なにが愉快たって、ブラジル人と付き合うくれぇ面白いこたぁねぇ。とにかくのんきでよぅ、滅法楽しくって、ジョークが大好き、おまけに働くことがでぇ嫌いとくらぁ。これでオマンマが食えるなら、ブラジルてぇとこは天国じゃねぇか。
 こないだはなぁ、ブラジル人のツアーってヤツにもぐりこんで一緒に旅行したが、まァ陽気に騒ぐのなんのって。大飯喰らって、笑うわ、歌うわ、ふざけるわ、まるで盆と正月―おっと、じゃねぇ、カーニバルとサッカーを一緒にしたような賑やかさには、たまげちまった。それによぅ、はじめてのご対面っていうのに、10年も前の友達って顔ですぐ仲良くなっちまうんだから、こちとら日本人は面食らっちまうわなぁ。
 旅からけえってきても電話かけてきてなぁ。ヤレ遊びに来ねぇかの、ヤレ飯食いにいかねぇかのって、まぁうちの主婦さん、とても付き合いきれねぇって悲鳴あげちまった。
 ところがさぁ、これが日本人だけのツアーかなにかに入ってみな。みんなかしこまっちゃって、へんに気取りやがってヤーな雰囲気だぜ。身内ならワイワイ騒ぐくせ、他人となると知っちぁねぇって態度でさ。
 だけどなぁ、その付き合いのいいブラジル人だってよぅ、ゼニがからむとコロッと人間が変わっちゃうんだから現金なもんだ。まるで金色夜叉でゼニに対する執着は尋常じゃぁねぇ。日本人が連中と組んでやった仕事にうまくいってるのがあるかい?日本人なんて甘っちょろいし、おめでたいもんさぁ、連中にしてみりゃぁな。
 だからブラジル人とは、ゼニのからまぬ根っからの友だち付き合いだけにするに限る。そうすりゃぁこんな楽しい仲間はいねぇぜ。
 なんたって面白れぇのは、連中の大好きなピアーダだ。小噺とでもいうか、ジョークとでもいうか、それも艶っぽいのがたんとあって、ご婦人の前じゃちょいとはばかられるのを助平男どもがやってよぅ。腹ぁかかえて笑ってやがるのを、ちょいちょい見かけるんだがなぁ、まぁ、そん中のちょいとお上品なヤツをひとつやってみるか。
 ―えぇ、散々ぱら遊び呆けたプレイボーイ、ここらが年貢の納め時ってなわけで、滅法可愛い嫁さん貰っちまった。サテお立会い、楽しい初夜のお祭りのあと、その野郎がさぁ、ついうっかり昔の癖が出ちまって、ゼニ出しちまった。しまった!と思ったらよぅ、その嫁さんから釣銭が出た―てナァどうだい?ええっ、だめかい?やっぱしなぁ、こいつぁポルトガル語でやんなきゃ味がでねぇんだ。
 よしっと、じゃ今度はちょいと高級なヤツでいくぜ。こいつが判るにゃ教養が要るんだ、教養ってヤツがなぁ、いいかい。ご存知ブラジルってぇとこは、世界中の人間がいるところだってぇことを、まず頭にいれといてくんな。じゃぁはじめるよ。
 ―女ひとりと男ふたりが無人島に漂流したってわけさ。さぁ当然何かがおっぱじまるね。いいかい、男ふたりがイタリア人だったらどうなるか?オレが先だ、いやオレだって取っ組み合いのケンカがはじまるんだ(なんせあちらは情熱の国、男はみんな血の気が荒いっていうじゃないか)。
 お次は男ふたりがフランス人だったらどうなるって思うかい?上手に話し合って、ふたりとも楽しむってわけさ(さすがはアモールの国、遊びなれてるねぇ、フランスの男てぇのは)。
 今度ぁイギリス人の番が来た。さぁ、どうなるか、お立会い!お互い、紹介されるまで黙ってるってよ(これが誇り高きジョンブルだとさ)。
 じゃ次はドイツ人だ。ふたりともなぁ、口から泡飛ばしてその女愛すべきかどうかの論争がおっぱじまった。女そっちのけでよ(ドイツってとこは、やっぱカント、ヘーゲルの国だぜ)。
 まだあるよ。今度は中国人のご登場だ。人民元を積み重ねてって、高いほうが先にいただいたとさ(今流行りの拝金主義だって)。
 さぁ、とうとうわれらがブラジル人のお出ましでござい。ふたりとも、レアルの札束積み上げて、高いほうが万歳したって…(なんだい、これじゃあ中国人のマネしただけじゃねぇか、って思うだろ。ところがあとでその札束調べてみたら、みんな贋物だったってさぁ、どうだい、やるじゃねぇかブラジル人ってのは…)
 さてお待ちかね、最後にわが日本人の出番でござい。さぁこのふたり、どうしたって思うかね。本社にメール入れて、どうしたらいいかってよ。トホホホホ……
 どうだい、このピアーダ。なかなか民族の特徴ってヤツを言い当ててんじゃねぇか。ブラジル人ってのは見所はちゃんと見てるよ。それにしてもなぁ、チト日本人のは情けねぇじゃないの?いちいち上に伺いを立てなきゃなんにも決められねぇんだからなぁ。
 ところで、この日本版にゃ落ちがある。届いたメールの返事にはこうあった。『役員会にかけるから稟議だせ』ってな。イヤこいつは呆介の〝創作〟でげす。
 テナ訳で、この国ピアーダの宝庫・天国、そしてブラジル人位ぇ小噺の名手はいねぇってことで、飛田呆介、飛んだ阿呆なお話でご免蒙りやしていただきやす。

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