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ニッケイ俳壇(870)=星野瞳 選

   アリアンサ         新津 稚鴎

新築の木の香の匂い秋の雨
金色の寺守り過疎の村の秋
パイナ吹き午後の授業の日語校
汗かきで涙もろくて髭面で
開拓や捕りし鹿肉干し溜めて

   ボツポランガ        青木 駿浪

芭蕉咲く山家に古き外厠
夕闇の迫る山家の花蜜柑
花栗の匂ふタピライ坂多し
夏時間老父の好きな庭掃除
筋力のつくバナナ喰べ老一歩

   ジョインヴィーレ      筒井あつし

難聴にも心地よき声サビア鳴く
難聴の歩を止むるや明けサビア
穏やかにくぐもる声や朝サビア
動静はサビアと我のみ朝の庭
未明よりボスケ姦し囀れる

   カンポスドジョルドン    鈴木 静林

房なりの青い木苺山の道
サワサワと桑食む蚕午前五時
蚕飼う家だけ残り寂れ村
蚕飼い国賊と云われ小屋焼かれ

日本との国交断絶により、ブラジルでは戦中から日本語の新聞やラジオ放送が禁止され、ポルトガル語が分からない日本人には正しい戦況などが伝わらなかった。そのためデマが横行し、「勝ち組」(日本は戦争に勝ったと考える人々)と「負け組」(日本は負けたと考える人々)の問題が発生した。アメリカに輸出するものを作る人々は『国賊』と呼ばれ、過激な攻撃を受けることもあった。

日本との国交断絶により、ブラジルでは戦中から日本語の新聞やラジオ放送が禁止され、ポルトガル語が分からない日本人には正しい戦況などが伝わらなかった。そのためデマが横行し、「勝ち組」(日本は戦争に勝ったと考える人々)と「負け組」(日本は負けたと考える人々)の問題が発生した。アメリカに輸出するものを作る人々は『国賊』と呼ばれ、過激な攻撃を受けることもあった。

登下校子供等仰ぐ青マンガ

   サンパウロ         湯田南山子

緑蔭や幹に彫られし二人の名
木下闇ポッと灯りし煙草の火
下闇にのっそりと居る疣蛙
呼鈴に猛犬唸る門若葉
夏柳櫂の如くに水をかく

   グァタパラ         田中 独行

西日さす学校の庭に雀来る
食べ切れぬ茄子学校へ子に持たす
移民老いただ数本の茄子手入れ
屋外の祝いに庭で茄子を焼き
半円の大虹描く西日かな

   ソロカバ          前田 昌弘

蜂の巣の露になりしジャカランダ
夕立や泰然として百歳翁
再生林整然として肌を脱ぐ
竹落葉コンドミニオに獣道
露天風呂岩の陰より蝙蝠が

   ソロカバ          住谷ひさお

雷の雨呼ぶ力たらず去る
白雨の吾が家包める五分ほど
黄金藤咲き去年実の落ち続く
朝涼や犬に引かれて散歩人
チプアナにジャカランダ落花路へだて

   サンジョゼドスカンポス   大月 春水

皺多き卆寿が湯浴春の月
交友の長きが彼の名古日記
神経痛みが走る居寝もせず
お盆すんではや年末の飾りつけ

   スザノ           山本佐一郎

金の雨百姓待てる雨降り来
友の訃の憂き旅立ちとなろうとは
八つずつインコ芭蕉の口ならび
掌尺して四差しに余る黄金藤

   サンパウロ         鬼木 順子

緑陰や金雀枝の花うす明り
煙る雨人の暮らしの開け始む
ベランダや湯上がり憩う宵の風
母逝きて寂しかりけり藤寝椅子
見えねども闇夜響かせ花火音

   サンパウロ         寺田 雪恵

一人分のそうめんぱらりと茹でにけり
テレビ見て月下美人を見そこない
涸みたる月下美人をなでてみる
九官鳥親さがし鳴く椰子の花
小さき鉢に小さく朝顔夏近し

   サンパウロ         佐古田町子

孫児らの願いかなえて夏の浜
帝王椰子の葉ずれ涼しき夏浜辺
豊後梅旨し甘しと夏の膳
文協の急坂息の切れる夏
夏の雨布団取り込む足もつれ

   サンパウロ         小斉 棹子

螢火や夫の春秋短かかり
忘れ行く幾詩のありや明け易し
祖母よりも母でありたき髪洗ふ
涙ぐみ書く礼状や明易し
靴をぬぎ上る畳に年忘れ

   サンパウロ         武田 知子

出逢ひあり別れもありて年暮るる
忘年会二十八階馳走かな
老ゆるとも落とし文とはときめきぬ
時効と云ふ歳月ありて年は行く
墨痕も鮮やか干支の賀状かな

   サンパウロ         児玉 和代

来る年をめくる楽しさ新暦
来る年を期して元気に納め句座
街灯の影ひそまりて朧の夜
行く春を惜しみつ灯消しにけり
敬虔さ微塵もあらず店聖樹

   サンパウロ         馬場 照子

紅匂葉花めく夏のクリスマス
三百ヘクタール励む稚鴎のアバカシー
鳳凰樹咲く名に恥ぢぬ花その姿
梅雨しげき大地潤すめぐみ雨
パネトーネも小振りの並ぶ年の暮

   サンパウロ         西谷 律子

郷愁をそそる除夜の鐘響く
気に入りの夏帽入れて旅鞄
不況といふ街の静けさ年の暮
打った蚊の血糊の残る掌の痛み
たくましくなれと裸の背を叩き

   サンパウロ         西山ひろ子

御正忌のかたえの静寂立子句碑
祈りより始まる準備降誕祭
カザブランカ聖母マリアにささげたし
分身に語りて尽きぬ日記果つ
記憶ふっと消えて忙わしや十二月

   ピエダーデ         小村 広江

生かされてひたすら生きて師走かな
煩悩の数百八とや除夜の鐘
青嵐鍬先はなれぬ雀二羽
樹下と云ううれしき所青葉風
牡丹蕉王の威厳の納め句座

   サンパウロ         川井 洋子

一年を大事に生きて納め句座
食べて寝て泣いて笑って年暮るる
急がずとも日々追って過ぎもう師走
あと幾つ寝れば正月童歌
ハイタッチだけの挨拶街師走

   サンパウロ         柳原 貞子

空白の多々ありし古日記
会長は日系三世忘年会
年毎に豪華になりし新暦
車止め手びさしで見る夏の海
老後とて多忙の日々や忘年会

   サンパウロ         大塩 祐二

あちこちに華やぐグループ忘年会
古タイヤ住家の子ぼうふら皆哀れ
夏本番散歩に荷重傘合羽
疲れ居し寝間に夜涼の心地良き
ギラギラと鏡面壁のビル暑し

   サンパウロ         大塩 佳子

賢こすぎるスマホに苦戦友の夏
師走かな残る掃除に気の重き
若い二人師走と云うも変りなく
お菓子添え新茶届ける嬉しさよ
夏のミサ歌う愛でしさ歌に涙

   リベイロンピーレス     西川あけみ

戻り来てやはり我が家よ夏の月
ひとしきり念腹の秘話初夏の句座
夜会服着るウィンドウ初夏の街
サラクーラ朝な夕なに我のシチオ
甘過ぎるブラジルの菓子新茶淹る

   サンパウロ         原 はる江

弛るまずに一と日一と日の暮の春
師走てふ景気はいづこ街しずか
生甲斐の句作に懸命春時雨
大出水低地に住む人に思ひ馳せ
健康であらば又ねと納め句座

   イタケーラ         西森ゆりえ

篠笛のあとひく奏者春の暮
ジャカランダ異国便りの写真にも
三方へ楽しく別れ暮の春
スケボーをあやつる少女風光る
鉈豆はジャックの豆のように伸び

   ヴィネード         栗山みき枝

ひぐらしや山波静かに夕暮れて
卆寿なる吾が生涯の一区切り
椰子の花ハワイアンの飾りめき
ラベンダの淡いピンクの窓べかな
日脚のぶ多々ある雑事も出来るだけ

   サンパウロ         平間 浩二

心より寸志包みて年暮るる
年の瀬や泣くも笑ふもあとわずか
不景気顔笑顔に変えて年忘れ
年越しのそばつゆ旨し七味添え
雨上がり紫紺の極みジャカランダ

   サンパウロ         太田 英夫

帰省子や猫に素知らぬ顔をされ
追えど蠅払えども蠅又も蠅
羅や着ては眺めて脱いで着て
職を辞し働き蟻を只眺め
蚊を殺し欠伸ころして経あげる

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