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 『文藝春秋』1月号にはペルー大使公邸占拠事件の体験記があった。当時の青木盛久駐ペルー大使によるもので、「日本人の不屈の精神に救われた」という。72人(うち日本人24人)もが人質になり、最初は便器が詰まってトイレはバスタブまで糞尿まみれに。日本人が率先して掃除をし、自治会を作って当番制で掃除にあたった。対するテロリストはどんどん規律がなくなり、最初は頻繁だった見回りも徐々にしなくなり、最後は廊下で居眠りしている見張りを人質が起こす始末。最後の頃、犯人らは食堂でサッカーを始めたとも。元大使は〃最近のテロリスト〃は《躊躇なく人質を殺害する》と変わり様を嘆く。時代の変化か、規律がゆるいのは南米人の特性か?
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 南米浄土真宗本願寺(西本願寺)では、14日から「報恩講」という法要を開催中だ。参加した耳子は、井上穣介開教使の〃しあわせ〃の法話に唸らされた。「『幸』という漢字の由来は囚人の手錠。なぜ自由を奪われて幸せかというと、死刑に比べれば、体の前で手錠されてでも生き延びる方が良いから。このことを『しあわせ』と言ったのです」。移民一世に元気で明るい人が多いのは、移住後の苦労と比較して、今の〃しあわせ〃を深く味わえるからではないだろうか。
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 勝ち負け抗争を描いたブラジル映画『汚れた心(Coracoes Sujos)』(ビセンチ・アモリン監督、12年)は、普段映画を見ない耳子にとって、ブラジルに移住しなければ一生縁が無かった作品だ。先日、人に薦められて観たが、冒頭場面で金子謙一氏が扮する移民が、国旗を踏みにじった警察から日の丸を取り戻そうとする姿に、胸をえぐられる思いがした。ただ、ちょっと気になるのは「You Tube」にアップされ、無料で見られる状態にあること。映画製作者側の利益を守るためには、いけないことだ。悲しいかな、アップされているおかげで、知名度のない映画が簡単に見られる現実も…。

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