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「日本文化」を読んで=自信と誇り回復に向けた希望=ブラジル日本語センター理事長 板垣 勝秀

板垣さん

板垣さん

 最近上梓された『日本文化』について、ニッケイ新聞の編集長から感想文をと依頼された。
 新聞に掲載された内容ではあるが、このようにまとまった本として改めて読み返すと、実に様々な感慨が胸を打ち、読みながらでも姿勢を正さざるを得ない。
 その感慨をあえて一点に絞ると、いろいろな場面の奥底に見え隠れする、日本民族が醸し出すものの考え方の起源やその生成過程に、無性に興味が湧いてくる。
 特にブラジルの昨今の政治や社会状況を目の当たりにするにつけ、一体全体、日本民族とは、何ぞやと。
 と同時に、この本に登場する人物とそのエピソード、その一方で、同じ日本でありながら、戦後70年疲弊した経済、どこの国籍かと疑うような薄っぺらなタレント風国会議員、自国を自らの手で守ろうともしない平和ボケ真っ只中の自称独立国家、スポーツの国際試合にしか晴れがましい出番のなくなった日の丸、などなど、これらも間違いなく現在のニッポンの実像でもある。
 さて、この同一民族の強烈なコントラストをどのように頭で整理すべきか、甚だ何ともやっかいな迷路に入り込んでしまう。
 もちろん、私などこれらの答えを持ち合わせている分けでは毛頭ない。
 しかし、あえてこの小さなアタマで考えるとするなら、多分、単一民族として、長い歴史の間、日本民族がその気候風土、環境の中で育まれて来た本来的な人間としての道徳観、伝統的隣人愛、知恵、他人を利する心、相互扶助、そうした精神が、時としてその時代の風潮や平穏単調な時間の中で流され、本人をもがその気付きや自覚を失わされてしまうという判断は、あまりにも楽天過ぎるであろうか。
 それが、戦争や前人未踏の開拓、大震災といった極限状況の中で、人々の眠っていたDNAを目覚めさせ、人間として正しい価値観を、しかも極めて自然な形で引き出し、結果として世界の賞賛を受ける素晴らしい行動につながったのではないか。
 もちろん、その各場面で、観客を意識する日本人など、誰一人としていない。
 私は、今の日本に感じる一番の不満は、理由なく自分たちの民族、文化に自信と誇りを持てないでいることである。
 食後のカフェの合間にも、街行くブラジル人を見るがいい。
 階層に関係なく、実に堂々と胸を張って往来している彼らに気が付く。
 ブラジル発日本人の自信と誇りの回復に向けた希望を、この『日本文化』に託したい。

 

□関連コラム□大耳小耳

 

 日本独自の精神性や文化、歴史を紹介する『日本文化』。第2節「有徳国家をめざして」では、戦前の道徳教育で中心となった教育勅語について解説する。明治の文明開化では西洋中心主義が蔓延し、伝統的な道徳が見失われつつあった。危機感をつのらせた明治天皇は、徳育に関する箴言をまとめて子供に教育するよう提案。教育家・井上毅は民族精神の伝統を解明するため、国史と国典の研究に没頭した。日本精神の伝統を命がけで編纂した物語。ぜひ一読してみてほしい。

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