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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(34)

 前の晩に巨額の投資をして入手した情報をきっかけに、私の頭の中で、サンパウロと群馬と新宿が、何となく一本の線でつながった。六本木とつながる線については、もうあの男に直接聞くしかないのかなと思った。
 そんなことを考えているうちに、午後3時を過ぎ、今度は、リカルド田中がケータイにかけてきた。職場は休憩時間に入ったらしい。
「こんにちは、リカルドです。お世話になっています。お忙しいところすみません」
 電話で、きちんと挨拶し、まず自分の名前を名乗るところは、さすが昔の日本流の礼儀をわきまえた日系人だ。リカルドの言うとおり、私は、その日めずらしく忙しかった。
 何か分かったことがあれば、日曜日ではなく、土曜日に聞きに来たいそうだ。公衆電話の向こうから、ラップとかいう音楽が聞こえる。例のフリーター君とガロータ(ブラジルの女の子)が、またカッコよく踊ってるみたいだ。
「いやー、ずいぶん情報が集まって、今整理してるところだよ。ところで、日曜日のサッカーは、昼までに終わるのかなー?よかったら、私がそっちに行くよ。一緒に昼メシでもどうだい。私も、たまには南米の雰囲気を味わいたいから・・・」
 リカルドと話し終わると、急に睡魔が襲ってきた。前の晩は、ほとんど寝てなかった。一人暮らしの悪い癖で、例によってソファに横たわり、そのまま爆睡してしまった。
 
何時間寝ただろう?いつの間にか夜になり、明かりのついていない部屋の中で、ケータイが光りながら鳴っているのに気づいた。やっと手を伸ばして出ると、礼儀をわきまえない若い男の声がした。
「あっ、オレだよ。オレ・・・」
 おっ!これは、今はやりの『オレオレ詐欺』か?
「オレ、今度、結婚することにしたよ・・・」
 さては、結婚資金を振り込めということか?
「相手の彼女連れて、クリスマス休暇に日本に行くよ」
 何と!カリフォルニアにいる息子からの電話だった。中国系のアメリカ人女性と婚約したらしい。
 息子は、親元を離れて独立してからは、仕事や仲間との付き合いが忙しいらしくて、時々しか連絡をくれない。でも、今年の年末は、新しいメンバーを加えて、久々に「家族で過ごす楽しいクリスマス」になりそうだ。
 人生で、「幸せ」って何だろう?よく分からないけど、亡くなった妻と二人で過ごした恋人時代と新婚時代、それから、息子が生まれてから数年の間に感じた「何かほんわかとした気分」が、ひょっとして「幸せ」の正体かもしれない。
 家族三人で仲良く過ごした古き良き時代を夢見て、再び眠りにつくと、またケータイが鳴り出した。寝ぼけた声で応えると、また出た!
「あっ、オレだよ。オレ・・・」
 さっきと違って、いかにもガラの悪そうな男の太い声。今度は、間違いなく『オレオレ詐欺』だと直感し、思わずケータイに怒鳴った。
「いい加減にしろよ!」
「・・・それはないだろう。そっちが頼んでおいて。重要で、急ぎだっていうから、電話してるんだよ」
 何と!サンパウロのセルジオ金城からの国際電話だった。まずは、平謝りして、話を聞いた。

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